小4男子の直訴が映した「学童保育」の大問題 なぜ「保育の質」のばらつきを防げないのか?

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「保育の質を守るには同僚との打ち合わせは欠かせませんし、保育の質を上げていくためには研修や、保育の実践をゼミ形式で報告し合う勉強会などへの参加は必須です。大阪市の学童保育は保護者会が運営しているため、財政的に不安定なところはありますが、保護者会が学童運営に理解があるため、勤務時間内に毎日打ち合わせもできるし、勉強会への参加も保証されています。

しかし、これは全国的に見て少数派です。給料が安いのに、どうして自腹で勉強しなければならないのか、と思う人がいても仕方がないかもしれません。勉強会への参加が経済的に無理な人もいるでしょう」

コウタさんは理解を示しつつも、「やっぱり学び続けることは必要だ」と強調する。

「学童によって指導員の呼び方はさまざまですが、先生と呼ばれるところも多い。長年働くうちに、知らず知らずのうちに尊大になり、自分の意のままに子どもたちを管理する王国を作ってしまうかもしれない」

前出のアキコさんに尋ねると、彼女が口にしたのは学童への期待の言葉だった。

「うちの子は途中でやめることになりましたが、学校や家庭では学べないことを学べたと思っています。学童はただ子どもを預かってくれるところとしか初めは思っていませんでしたが、人を育てる場所だと思うようになりました。そんな貴重な学童という場所を守っていってほしい。だから、指導員によって保育の質に差が出ないことを願います」

須藤 みか ノンフィクションライター

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すどう みか / Mika Sudo

長く上海を拠点に活動したのち、2014年秋帰国。現在は、大阪、在日中国人のほか、子どもと読書、子どもの育ちにかかわる職業などをテーマに取材。著書に『上海ジャパニーズ』他。2009年、『エンブリオロジスト 受精卵を育む人たち』で第16回小学館ノンフィクション大賞受賞。「本好きキッズの本棚、見せて見せて!」などに連載中。

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