小4男子の直訴が映した「学童保育」の大問題 なぜ「保育の質」のばらつきを防げないのか?
ところがシンタロウ君が3年生になると、これまでの指導員が異動。その代わりにやってきた指導員は、外遊びの時間を制限、虫捕りはダメ……と、今まで可能だったことを禁止にした。子どもたちは混乱し、ストレスをためていった。「指導員が代わると、これほど学童の雰囲気が変わってしまうのか」とアキコさんは驚いた。
同学年の男の子たちは退所していったが、放課後を1人で過ごさせることが不安でアキコさんは通わせ続けた。
定員を超過すると低学年が優先されるため、これまでは4年生になると退所するのが慣例だった。しかし今年度は欠員が出たことで、4年生も学童を続けられることに。アキコさんがそう告げると、シンタロウ君は「行きたくない」と泣いて訴えた。指導員は僕の話を聞いてくれない、頭ごなしに怒る……。シンタロウ君の不満は募っていった。そんなとき、くだんの出来事があったのだ。
指導員に口ごたえをした別の子どもの保護者が「子どもの態度について、親としてどう思うのか?」と迫られたという話も思い出した。退所させるしかないとアキコさんは決断したが、もしかしたら、と望みをかけて話し合いの場を求めた。このまま通うにしろやめるにしろ、シンタロウ君が思いを伝えることも大切だと思ったからだ。
シンタロウ君は面談の日、冒頭の文章を指導員の前で読み上げた。アキコさんも指導員への感謝、敬意を示したうえで、「子どもの声をいったん受け止めたうえで、学童としてできることと難しいこと、本人が直さなければならないことを話してほしい。親としてできることも教えてほしい」と伝えた。しかし、シンタロウ君は指導員の言葉に納得ができぬまま、面談は終わった。1カ月待ったが学童から、それ以上の回答はなかった。
なぜ指導員は「かくれんぼ」を禁止するのか?
厚生労働省は2015年、学童保育運営の「従うべき基準」を施行。「放課後児童支援員」という指導員の公的な資格が設けられ、研修も課された。保育の質を底上げするためだ。
しかし、保育の質には明らかなばらつきがある。また、待機児童問題を抱えるなかで、「基準を満たす指導員を確保することが難しい」という地方自治体の声に応えて、政府は基準を撤廃する方向に舵を切ろうとしている。保育の質の格差はますます広がりそうだ。
大阪市内の学童保育で働いて20年のキャリアがあり、大阪府や和歌山県で「放課後児童支援員資格研修」の講師を務めるコウタさん(仮名、41歳)はこう話す。
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