「仕事の内容は、非正規の職務や責任の範囲を超えていました。仕事の量も、16日勤務でこなせる限界を超えていました。社会教育指導員には、昼過ぎから夜間までの遅番勤務があるのですが、休み明けの昼過ぎに出勤すると、夕方までに資料を作成しろという命令が下りてきているんです。到底無理。事業のスタートが近づくにつれ、期限に余裕のない、思いつきのような指示がポンポンとふってくるようになりました」
次第に寝つきが悪くなり、酒量が増え、ついに限界がきた。
またしても急な命令で開かれることになった会議で、資料作成や会場準備が間に合わなかったのだ。結局、会議のスタートが遅れるなどの支障が出た。さらに、後日、開かれた研修会の席で上司から「準備不足」「時間の無駄」などと叱責されたという。
そしてある朝、布団から起き上がることができなくなった。初めての無断欠勤――。病院でうつと診断された。
リョウさんの場合、残業が月60時間とはいえ、もともとの勤務日数が少ないので、過度の長時間労働があったとまでは言えない。ただ、残業代の未払いは法令違反だし、16日勤務ではこなせない量の仕事を押し付け、叱責するのは、典型的なパワハラのひとつ「過大な要求」に当たる。
リョウさんは「限られた条件の下で、懸命に期待に応えてきたつもりです。(叱責した上司は)非正規の働かせ方も知らないんですよ。プライドが傷つきました」という。体というより、心が壊れた、ということなのだろう。
「1カ月の勤務日数は16日以内」の違和感
病気休暇に入ると、正規公務員の同僚の中には、リョウさんを心配してくれる人もいた。しかし、いったん雇い止めが決まった後は、それ以上抗議の声を上げてくれることはなかったという。
要するに、メンタル不調に陥った場合、非正規公務員は事実上、即クビということだ。正規公務員なら、ブランクを重ねながらも、働き続けている人は少なくない。職場環境によるとはいえ、復帰を目指せる職場があるか、ないかとでは天と地ほどの差がある。
話は少しずれるが、私が官製ワーキングプアの現場を取材していて、違和感を覚えることの1つは、「1カ月の勤務日数は16日以内」という、一部の非正規公務員に適用される勤務形態だ。これは、「勤務時間は、常勤職員の4分の3を超えない」という人事院規則に準じ、自治体側が持ち出した規定である。
しかし、非正規公務員の中でも、「主たる家計の担い手」が増えるなか、自ら16日勤務を望む人がどれだけいるだろうか。一人暮らしをしたい、貯金をしたい、結婚をしたいと思えば、せめて任用期間中はフルタイムで働き、もっと稼ぎたいと考えるのではないか。
実際、16日勤務の非正規公務員の中には、ダブルワークやトリプルワークをしている人もいる。いずれにしても、地方自治体はこんな中途半端な雇用を生み出し、いったい、どこへ向かおうとしているのか。
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