アウディのEV「e-tron」は一体何がスゴいか

洗練された乗り味と充実した先進装備が光る

エンジンの代わりに前車軸に最高出力125kWの、後車軸に同140kWの電気モーターがそれぞれ備わり、4輪を駆動する。通常走行ではリアモーターのみを使って駆動し、鋭い加速や必要になったり後輪がスリップしたりした場合、瞬時(0.03秒以内)にフロントモーターが加勢する。

システム全体の最高出力は265kW、最大トルクは561Nmだが、アクセルを床まで踏み込むとブーストモードが起動し、最大8秒間に限り、同300kW、同664Nmにまで性能が上がる。参考までに、テスラ「モデルX100D」の最大トルクは625Nm、ジャガーI-PACE(ペイス)は696Nmといずれも600Nmを超えている。これは自然吸気のガソリンエンジンでいえば6リッター級、もしくは4リッターターボ級に相当する数値だ。現状、ラグジュアリーEVはどれも高価だが、600Nm級の性能を得るなら割安と考えることもできる。

実際に乗ってどうか。結論から言えば、これまでに乗ったEVのなかで総合的に最も優れていると感じた。まず路面へのパワーの伝わり方が非常に洗練されている。遅いわけではなく、かといって単に速いというのとも違う。フィーリングの面でも、アクセル操作に対する反応が敏感すぎず鈍感すぎず、ドライバーが心地よいと感じる反応を見せるのだ。バッテリーの電力の出し入れやモーター出力の特性、それらを制御するプログラムが優れているのではないだろうか。

0-100km加速は通常モードで6.6秒、ブーストモードで5.7秒と十分な加速力ではあるものの、ラグジュアリーEVとしては控えめ。EVの場合、加速力はいくらでも速く設定できるといっても過言ではないが、e-tronはそこでは勝負していない。まるで「新興のテスラと違って、われわれは過激な加速力をもって魅力をアピールする必要がない」と言っているようにも思えるが、それはアウディを上品に見すぎで、将来、過激なハイパフォーマンスバージョンを出す余地を残していると見るべきだろう。

減速は(たとえブレーキペダルを踏んでも)0.3Gまでは回生ブレーキが担う。それ以上は通常の油圧ブレーキが作動するが、日常的な使い方による減速の実に90%が0.3G未満だという。すなわちe-tronはほとんど油圧ブレーキが作動しないということだ。ブレーキパッドは長持ちするだろう。

ボディの随所に施された遮音対策

ボディは堅牢感があり、エアサスの動きも終始しなやか。ステアリングホイールやペダル類の取り付け剛性も高いため、乗り心地や操作フィーリングはすばらしい。加えていくつもの対策のおかげで静粛性が非常に高い。たとえばCd値0.28と優れた空力ボディ採用による空気抵抗低減。おかげで風切り音も非常に小さい。また専用ガラスをはじめボディの随所に遮音対策が施されており、音が車内に入ってきにくくなっている。

e-tronのインテリア(写真:アウディ)

「エンジンがないから静かなのは当然」と考える人がいるかもしれないが、それは違う。クルマが発する音はエンジンだけではない。タイヤが発するロードノイズ、風切り音、ギアボックスが発する音など、発生源は多岐にわたる。e-tronは一つひとつ丁寧に対処している。EVという従来とは異なるシステムを採用するがゆえに高価なのだが、ユーザーは以前その価格を支払って獲得したのと同じだけの快適性を期待する。アウディはプレミアムブランドとしてそのことをよく理解し、地道に快適性を追求したはずだ。

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