アウディのEV「e-tron」は一体何がスゴいか 洗練された乗り味と充実した先進装備が光る

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バーチャルエクステリアミラー。本来ドアミラーが備わる場所からステーが伸びている(写真:アウディ)

今回、バーチャルエクステリアミラーという空力性能向上のために象徴的な装備が採用された(オプション装備)。先般レクサスESが量産車に初採用したデジタルアウターミラーと同種の装備で、後方の情報はミラーを通じてではなく、カメラ映像を映すモニターで確認する。レクサスES同様、本来ドアミラーが備わる場所からステーが伸びてその先にカメラが備わる。そのカメラが移した映像がドアの一部に組み込まれたモニターに映し出されるのだ。

映像はかなり高精細だ(筆者撮影)

後付け感満載の長方形のモニターがAピラー下端に備わるレクサスESと違って、e-tronのモニターはドアの前方にあり、内張りのデザインに溶け込んでいる。何よりレクサスのそれよりも映像がはるかに高精細なのがよい。先日レクサスESで初体験した時点では比較対象がなかったこともあって満足したが、性能面もデザイン面もはるかに優れたe-tronのそれがほぼ同時に開発されていたことを知り、やや複雑な気持ちになった。ミラーがないことでCd値は0.27に向上する。

30分もあればほぼ満充電にできるコンボ式充電器

e-tronのバッテリーの総電力量(バッテリー容量)は95kWh。リチウムイオン・バッテリーを床下に敷き詰める搭載方法はテスラやI-PACEと同じ。一充電で走行可能な距離は400km超(WLTPモード)。普通充電はもちろん、急速充電にも対応しており、欧州に整備される予定のコンボ(CCS)式の急速充電器を使えば、最大150kWの速さで充電することができる。

これならほとんど電力が残っていない状態からでも30分もあればほぼ満充電にできる。アウディが属するVWグループをはじめ、BMW、ダイムラー、フォードは充電ネットワーク構築で手を結ぶことを表明していて、2020年までに欧州の主要な高速道路に120kmごとに計400基のコンボ式充電器を設置すると計画している。

1回の充電で走行可能な距離は400km超(WLTPモード)(写真:アウディ)

このコンボ式充電器は日本には存在しないし、設置の計画もない。ジャガーI-PACEと同様に日本でe-tronを急速充電するにはCHAdeMO規格の充電器を使うことになる。これだと理論上50kW、実測では30kW前後の速さにとどまるため、充電には長時間を要することになるはずだ。その点、テスラはCHAdeMOが使えるのに加え、都市部を中心に約20カ所程度と数は限られるものの、120kW程度の速さで充電可能な独自規格の充電器「スーパーチャージャー」を整備している。

今後、アウディやジャガーが独自の急速充電設備を国内に整備できるかどうかは不明で、できたとしても何年も先の話だろう。あっという間に街中に多数の急速充電器が整備された中国都市部と違って、日本でこれらラグジュアリーEVを普及させるには、クルマ自体の進化よりも充電インフラを整備することが急務だ。

しかしこの充電に関する不安を除けば、e-tronのラグジュアリーEVとしての完成度は非常に高い。車内空間は前後とも十分に確保されるほか、ラゲッジ容量も十分で、実用性が高い。ドイツで来春早々に発売される。アウディジャパンは来年前半までの日本導入を目指すという。ドイツでの価格は7万9900ユーロ(1022万円)から。日本では最もベーシックな仕様でギリギリ1000万円を切る価格を目指しているようだ。

塩見 智 ライター、エディター

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しおみ さとし / Satoshi Shiomi

1972年岡山県生まれ。関西学院大学卒業後、山陽新聞社、『ベストカー』編集部、『NAVI』編集部を経て、フリーランスのエディター/ライターへ。専門的で堅苦しく難しいテーマをできるだけ平易に面白く表現することを信条とする。自動車専門誌、ライフスタイル誌、ウェブサイトなど、さまざまなメディアへ寄稿中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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