外資の株資金流出は続くが、インド経済に大変調はない
また、新興国の市場は国土が相当に広いが、大都市だけではなく、かなり奥地の市場にも商品が浸透している点で、先進国企業よりもうまく機能している。大きな国内市場をカバーすることを視野に入れたビジネスモデルを設計でき、これと価格主導権を取れる現地化によって、多くのセクターで成長している。
第二は根本的な優位性だ。低コスト地域で大規模に運営していることが多く、高いコストの地域では小口のプラントで受注生産だけをやっている。生産のネットワークを全体でかなり安くできるシステムを組んでいる点は、新興国の超優良企業の特徴だ。先進国企業に比べコスト的な優位性が圧倒的に大きい。
第三には、新興国の超優良企業のほとんどが、非常に積極的な行動をとっている点だ。さまざまな業務提携とか、企業買収に対して、かなりオープンなスタンスをとっている。他社からのさまざまなラーニングに対する姿勢が非常に開かれている点も大きな違いだ。
先進国企業は自社での開発や発明が重視されるが、新興国の超優良企業は自社にないものを買収によって手に入れようとか、あるいはイノベーションということですらパートナーシップを組んでやっていくことにも非常にオープンだ。このようなアプローチをとる先進国企業は少ない。
第四の違いは人材だ。新興市場では非常に人口が多く、新卒の学生も多いという統計はあるが、こういった人たちの雇用可能性といった点では非常に低いと言わざるをえない。人材として確保できる人をもっと増やすには、しっかりとトレーニングをして、採用後の研修を積まないとなかなか使える戦力にはなってくれない。このため、企業が大学との関係を持っていたり、自社の中のバーチャル大学というような形でトレーニングをしたりして、そこから人員配置して現場に就かせる工夫をしている点も違いだ。
--新興国の超優良企業にとって、今後も成長していくうえでの克服すべき課題は。
一点目は自分の会社のマネジメントの能力をどう高めていくか。会社の業績が非常に伸びているが、その伸びに合わせて会社経営の機能を深さや規模の意味でもどう高めていけるかが課題だ。二つ目は技術力を構築していかないといけない点だ。かなりセグメントされた技術では評価されているが、もっと広い領域での技術力を蓄えていかないといけない。三つ目はブランド力の構築だ。今後先進国に出て行って、より幅広くビジネスをしていくうえでは、知名度を上げるための投資が必要だ。
--日本の企業と新興国の超優良企業が、お互いにシナジーを持てる可能性はありますか。
好例は第一三共がインドのランバクシーを買収した話だ。ランバクシーはジェネリック市場でグローバルに優位性があり、第一三共は日本でのローカル企業で研究開発してきた。グローバル市場の中で、今後伸びるジェネリック製品と研究開発機能とのシナジーに、両社の可能性とチャンスが見込まれる。
つまり、異なった企業文化や風土をうまく融合させ、いかに結果を出せるように持っていけるかが重要だ。M&Aではお互いに相手の強みを尊重しながら、シナジーを出せるようにしないといけない。
--先進国企業が、新興国の超優良企業に学ぶべき点は。
まず今以上に新興国において、いかに現地化できるかを考えてほしい。また、資産や拠点の展開を高コスト地域から低コスト地域へ、シフトしていくことを検討すべきだ。
(鈴木雅幸 撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済)
Arindam Bhattacharya
IIT工学部卒、英ウォーリック大学で工学博士。A.T.カーニーを経て2002年ボストンコンサルティンググループ(BCG)入社。インドの産業財、自動車のヘッドを務める。最近の共著に『新興国発超優良企業』。
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