100歳間近の女性が家族を丸ごと面倒見る気力

「娘婿に食べさせる」ための食事作りが中心

普通の長寿者が元気なうちにどのように「身じまい」の支度をすべきなのでしょうか(写真:byryo/iStock)
前人未踏の長寿化が進む日本の社会。『百まで生きる覚悟 超長寿時代の「身じまい」の作法』を著した家族社会学者の春日キスヨ氏は90~100歳間近の元気長寿者や高齢者、介護や世話を担う家族に聞き取り調査を重ねました。本稿ではその中で、元気長寿者のひとりである娘婿と暮らす100歳間近の女性Aさんの暮らしをご紹介します。

「普通の元気長寿者」の日常生活

話を聞かせてもらった長寿者中、100歳間近(取材時、以下同)という高年齢もさることながら、その生きる「気力」に圧倒され「すごい人だ」という思いを最も強く持ったのが、Aさんの暮らしぶりだった。

まず、簡単にAさんのプロフィールを紹介し、その「気力」を生み出し、維持する原動力は何かについて考えていこう。

《Aさんのプロフィール》 1917年(大正6年)生まれ。夫は60代で死去。Aさんが自力で購入した居宅に、娘夫婦と同居。だが、Aさんが86歳の時、娘が死去。その後も娘の夫(70歳間近)と同居継続。経済面は、Aさんが定年まで35年間働き続けて得た年金でまかなっている。

健康面では、耳が不自由で、筆談での日常会話が必要。また、立ち上がり時の困難、歩行時の不自由があるものの、重い病気の既往歴はない。

まず私は、Aさんの暮らしぶりの何に驚いたのか。 100歳間近という年齢にもかかわらず、同居する娘婿の食事を欠かさず作り続け、娘婿が食費、光熱費などの生活費をいっさい負担しないなかで、丸ごと面倒をみていること。 次に、食堂を開いている孫のために、ラッキョウの甘酢漬けを毎年40キロも漬けていること。

さらに、Aさんの楽しみは編み物なのだが、今でも編み物教室に通い続け、自分用だけでなく、離れて住む息子や孫、曾孫用にも編み、地域の「公民館祭り」に毎年2、3点を出品し続けていること。

そしてなんといっても、そうした家事を自分の決めたスケジュールどおりに日課としてこなしていく徹底ぶり。 そうした日常習慣化したAさんの暮らしぶりに、私はAさんの生きる「気力」を読み取り、「スゴーイ!」と感じたのだ。

それをAさんの語りから具体的に見ていこう。

まず、Aさんの一日は、「娘婿に食べさせる」ための食事作りを中心に組まれた日課を、スケジュール通りにこなす形で過ぎていく。

Aさん 「私みたいに時計を見て一日を過ごしている者は少ないと思います。 朝5時過ぎに目を覚まし、テレビをつけ、6時10分前に起きます。起きたらすぐ、仏様の水を替えて。仏壇が1階と2階に2つあるので大変なんですが、階段の手すりにすがってそれをして、その後、着替えて食事の準備をします。 婿に朝食を食べさせ、後片付けをすると、7時。その後は普通、編み物をします。11時半になると、昼の準備、食事、それを片付けて、3時半になると夕食の支度。5時頃には婿に夕食を食べさせます。 夕食の後片付けをしてお風呂。7時か、8時くらいまでテレビを観て、その後、寝ます。年中、時間の通りに動く。だからけっこう忙しいんです」

この語りからは、家事を日課としてスケジュール化し、それを徹底して守ることを自分の生活課題の1つとし、「年中、時間通りに動く」形でそれを達成できていることが、「私みたいに時計を見て一日を過ごしている者は少ない」と言うAさんの自負とつながり、暮らしを「けっこう忙しい」ものにする励みともなっている事実が読み取れる。

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