「カメラを止めるな!」の超ヒット生んだ本質 「拡散」よりすごい「感染」のヒミツ

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この映画が広まったポイントを表現するうえで、重要なキーワードと言えるのが「拡散」ではなく「感染」なのではないか。

そう、さとなおさんが、何度も繰り返し強調されていたのが、タイトルにも書いたこの「感染」というキーワードです。

対談にて「感染力」を語るさとなおさんこと佐藤尚之さん(写真:チーム「カメ止め」感染者)

いわゆるバズマーケティングとかバイラルビデオ。バズを起こす、拡散させたい、というフレーズは、ソーシャルメディアのマーケティングやクチコミの企画をするときに、よく使われるキーワードです。

このバズや拡散という言葉がイメージしているのは、ツイッターなどのSNSで一斉に大きな話題が巻き起こる現象。

多くの企業やメディアがネット上で狙うのも、話題の拡散。おもしろ動画を作ってみたり、話題になる企画を実施してみたり、それによってクチコミで大きく話題が拡散されれば、少ないコストでも大きな話題を生み出すことができる、というのがソーシャルメディア時代の1つの可能性ではあります。

ただ、この「拡散」というのは、一般的には一時的な話題として、短期間で終わってしまうのが通常です。

大きな注目を集めた話題にしても、炎上ネタにしても、日大アメフト問題のように次々に燃料が投下されない限り、通常は1週間もすれば忘れられて世の中は次の話題に注目するようになります。

大抵の大作映画の話題も、公開初日は多くのメディアが取り上げて話題になるかもしれませんが、通常は公開日がピークで後は落ちていくだけ、という曲線をたどるのが通常です。

ところが、『カメラを止めるな!』はまったく逆の曲線をたどりました。

公開当初の2018年6月には一部の人にしか注目されていなかったのに、日に日に話題が大きくなっていくという、まさに感染による”ポンデミック”現象を巻き起こしたのです。

この強烈な感染力はどこから生まれていたのでしょうか?

まず、映画のコンテンツそのものの完成度が非常に高く、感染力が強い作品であったことは間違いありません。

一般的にネット上で大きく拡散する話題には、3つの要素が含まれていることが多いと考えています。

サプライズ

これはいちばんわかりやすいでしょう。

驚きがあるからこそ人に言いたくなるものですし、SNSでのシェアやリツイートのきっかけになります。

驚きの要素は、怒り、喜び、悲しみなどさまざまなケースがありますが、『カメラを止めるな!』がサプライズに満ちあふれた作品であったのは間違いありません。

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