「カメラを止めるな!」の超ヒット生んだ本質 「拡散」よりすごい「感染」のヒミツ

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ちょっと時計の針を巻き戻してみましょう。

『カメラを止めるな!』が6日間の限定公開されたのは2017年の11月。

ある意味、2017年の作品としてそのまま知る人ぞ知る名作として終わっていてもおかしくなかった作品が、この11月の公開での反響を起点として、2018年3月にはゆうばり国際ファンタスティック映画祭2018で三冠を受賞。4月のウーディネ・ファーイースト映画祭では観客賞2位を受賞するなど、映画賞を次々に受賞。

6月には、ついに正式に公開されることになるわけです。

集客人数目標はたったの5000人だった

ただ、今となっては信じられない話ですが、この6月の段階で『カメラを止めるな!』を公開した映画館は、新宿K's cinemaと池袋シネマ・ロサの2館だけ。

しかも当初は3週間の公開期間という前提で、目標の集客人数は5000人だったそうです。K's cinemaの席数が84で、シネマ・ロサが200弱のようですから、実はこれでも公開前の監督や関係者の方々からすると高い目標だったと聞きます。実際に、これまでのENBUゼミナールでの最高記録が6000人だったんだとか。

ファンイベントで公開当初の裏話を披露する市橋プロデューサー(左)と上田監督(写真:カメラを止めるな!を止めるな!)

この時に上田監督をはじめ、関係者が持っていた宣伝手段は、チラシ5万枚と、ツイッターとウェブサイトだけ。

通常の大作映画であれば、シネコンに映画を見に行った時に、ほかにやっている映画のポスターも目にしますし、今後公開される映画の予告で公開時期を知るはずです。さらにもっと大作映画であればテレビCMを流すでしょうし、情報番組で公開直前に紹介してくれるでしょう。

でも、『カメラを止めるな!』はミニシアター2館だけしかないので、そういう「普通の」映画で使われている販促手法は一切使えないわけです。

そこで上田監督と関係者の方々は、自分達が持っている手段とクチコミを最大化する方法を全力で考え、試します。

まずは、チラシをとにかく色んなところに配ったそうです。

普通の映画でやるように、公開される映画館に山積みで置いておくのではなく、カフェとか本屋とか、普通だったら映画のチラシを配らないようなところにもお願いして置いてもらったそうです。

ダメもとで、シネコンにも行ってスタッフの人に配ったり、ドン・キホーテにも行ってみたりしたそうです。しかも、公開される映画館のある新宿と池袋だけでなく、下北沢とか渋谷にも遠征したんだとか。

それぐらい関係者が、多くの人にこの映画を見てほしいという思いが強かったことがよくわかります。

さらに宣伝活動を、単なる「宣伝」ではなく「エンターテイメント」にしようと、いろんな仕掛けにトライします。

例えば、公開までの60日を関係者60人でツイッター上でカウントダウン。自然と、このカウントダウンも大喜利のようになっていったとか。

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