東京駅で「嘉門タツオ」が熱唱した意外な理由 地域活性を目的にフェスを活用する例が急増

拡大
縮小
東京駅の地上ステージで歌うささきちか氏(記者撮影)

東京エキマチFES!のもう1つの特徴として、地域活性化策として打ち出されたイベントであることが挙げられる。東京ステーションシティ運営協議会は東京駅周辺の商業施設への来街者を増やす狙いで、今年2月から「東京エキマチライブ」を開催。今回の地上ステージと同じペデストリアンデッキで、月に1度(毎月第4水曜日)を基本に2時間程度のライブを開いてきた。

「今回のフェスを通じて、地域の人たちとともにエリアの活性化に取り組んでいきたい。普段とは少し違ったこのエリアの魅力を再発見してほしい」と、東京ステーションシティ運営協議会事務局の工藤麻友美氏は語る。

ライブ市場は右肩上がり

音楽業界ではCDの販売数が年々減っている。日本レコード協会によると、CDを含めた音楽ソフトの国内生産額は1998年の6074億円をピークに、直近の2017年は2320億円と6割以上も減少。その一方で、フェスやライブの観客動員数は右肩上がり。コンサートプロモーターズ協会の調べでは、国内のライブ年間売上高は1998年710億円から、2017年3324億円へと4倍以上も膨らんでいる。

同協会の中西健夫会長は、「さまざまなアーティストを見ることができる音楽フェスは、時代のニーズにマッチしている。フェスに行くこと自体が、ひとつの文化になっている」と分析する。

嘉門タツオ氏のライブは200人の観客で大盛況だった(記者撮影)

実際、音楽フェスを地域活性化に役立てようとする動きは、全国的に広がっている。東京・下北沢では地域周辺のライブハウスや野外ステージにおいてサーキット形式でライブを行う「下北沢にて」を8年前から開催している。

地方に目を向けると、秋田県では「男鹿ナマハゲロックフェスティバル」「秋田CARAVAN MUSIC FES」が催されている。奈良県の宇陀市では、お寺の境内でライブを行う「寺ロック」が毎年実施されており、今年6月には人気ハードロックバンドのアースシェイカーが登場し、地域の活性化に一役買った。

音楽評論家の人見欣幸氏は「音楽フェスが“町おこし”に活用されるケースは、これからも増えてくるだろう。町の名物にしたい、という考えもあるようだ」と説明する。音楽フェスは今後、どこまで広がるだろうか。

梅咲 恵司 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

うめさき けいじ / Keiji Umesaki

ゼネコン・建設業界を担当。過去に小売り、不動産、精密業界などを担当。『週刊東洋経済』臨時増刊号「名古屋臨増2017年版」編集長。著書に『百貨店・デパート興亡史』(イースト・プレス)。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT