そもそも、相手を変えるという認識を変える必要があります。問題は自分にあるのではなく、相手にあるという呪縛から逃れなくてはなりません。
そのためには、自分と相手との境界をきちんと意識することです。相手との境界があいまいな人ほど「相手を変えたい、変えられる」という思いにとらわれがちになります。そして、感情に振り回されて疲弊します。
以下、いくつ当てはまりますか?
・上司(親)なら部下(子ども)が失敗しないように導くべき
・「○○してあげたのに」という思いを感じることが多い
・相手の対応が予想外のときに腹が立つ
・良かれと思ってしたことが裏目に出ることが多い
以上は、自分と相手の境界のあいまいさのチェックです。2つ以上当てはまれば、予備軍。3つ以上当てはまれば注意が必要です。
相手に対して「あなたのため」や「私が助けてあげるべき」という気持ちがあるのは、こちらの思いの押し付けにすぎず、相手を対等に見ていません。対等でないということは、支配関係を構築していることにほかならず、相手からすれば、抑圧や自主性を奪われてしまうような感覚になります。
また、こちらの好意が実を結ばなかったときに「せっかくしてあげたのに……」「こんなにしてあげたのになぜ」という思いが強いのは、結局、相手のことを考えてはおらず、自分に注目してほしい傾向が強く、健全な関係構築に大きな障害となります。
自分は自分、相手は相手と切り分けて考える
依存度が強いと、人は攻撃的になります。相手に依存すればするほど、相手を攻撃対象とみなし、意見の押し付けや行動を変えることを要求しがちになるのです。攻撃すれば良好な関係を保つことは難しく、相手から拒否されても致し方がない状況に陥ります。
これを改善するためには、自律(自分をコントロールすること)が必須です。相手をコントロールすることでは、決して心の平穏は訪れないことを自覚しましょう。誰かのせいや何かのせいにすることなく、自分は自分、相手は相手と切り分けて考えることが何よりも大切なのです。
相手のせいにし続けるかぎり、負のスパイラルから抜け出すことは難しくなります。このスパイラルから抜け出すことができれば、相手を本当の意味で尊重することができ、対等な関係を育むことが可能になります。対等な関係性は、真の意味で相手と向き合うこと、理解し合えることにつながり、心地よい交流が可能になります。
特に身近な人間関係では、この境界があいまいになりがちです。しかし、日々接する相手だからこそ、境界が重要であることを認識していただけたらと思います。決して相手を遠ざけることではありません。自分と相手との間にある一定の距離感が、お互いを思いやる大切な感覚なのです。
認め合い、分かち合うための関係構築の一助となれば幸いです。
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身近な人たちとのより良い関係性を育み、気持ちのコントロールを目指す本連載『自衛隊員も学んでいる!タフな大人のメンタルチューニング』で記事を書き始めて、今回で100回目になります。
ここまで続けてこられたのは、ひとえに読者の皆様の温かいご支援と、いつもサポートしてくださる東洋経済オンラインの皆様のお力によるものと心より感謝申し上げます。
今後も皆様のお役に立てる記事を発信できるよう尽力してまいりたいと存じます。感謝を込めて。
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