就活生6割以上が経験、「だまし面接」の実態 面談を名目に呼び出す実質的な採用活動

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学生を呼び出す名目だが、圧倒的に多いのは「面談」だ。単なる面談で会うのは人事だろうが、人事以外に会うこともかなりある。「リクルーター面談」、「社員との面談」、「インターン参加者面談」などのパターンがある。中には「部長面談」や「最終面談」という例もある。ここまでくると、選考ではないとの言い逃れは難しいだろう。

「マッチング面談」、「ジョブマッチング面談」と、互いの相性を見るためだと言わんばかりの面談もあるか、これも明らかな選考だ。その他に「ES提出面談」、「就職面談会」、「事前面談会」、「個別面談」などがあるが、いずれも選考を意味している。「模擬面接」も経験している学生が多いが、企業の下心が透けて見える。

その他に「座談会」、「マッチングセミナー」や「キャリアディスカッション」などもあるが、言葉が単調であまり中身が見えてこない。文系の場合は、会って話す内容が決まっておらず、会うこと自体が目的なのかもしれない。つまり、親しみや理解を深めよう、という意図だ。

文系の呼び出し名目は単調だが、理系になると言葉が多くなり、中身が見えてくる。「研究所見学会」や「工場見学会」は、理系学生なら見ておきたいだろう。「技術懇親会」、「役員懇親会」、「先輩社員との面談」、「分野別説明会」、「ジョブマッチング」も、どのような職種がどのような技術領域を扱うのかを知ることができそうだ。

「ポスターセッション体験」というものもあった。文系には聞き慣れない言葉かもしれないが、学術的な研究成果をポスターに掲示して、学会などで発表する方法だ。

「選考会」や「適性アドバイス会」と言う名前で呼び出された理系学生もいる。「キャリアマッチング面談」や「マッチング面談」は、文系学生でも出てくる言葉だが、理系のほうが生々しく、選考臭が強い。

上位校相手ほど「だまし面接」が常態化

今回の調査結果をまとめてみると、上位校の学生に対しては、事前に呼び出す「だまし面接」は常態化している。特に旧帝大クラスと早慶クラスで目立つ。

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単なる面談なら、企業と学生が素顔で出会う場、という意味もあるかもしれない。しかし、「模擬面接」や「ES提出面談」、「事前面談」は、明らかな選考プロセスだ。ただし、その中身を見ると、文系の場合は内容があいまいである。文系採用では大学での専攻をほぼ無視しているが、そんな曖昧さが面談にも反映されているように見える。

理系の場合は呼び出しの名目が明確で中身が分かる。研究所や工場の見学は、学生にとって有益だし、企業にとっても選考プロセスと言える。そしてかなり多くの製造業が実施している。

さて、新卒採用の景色は、変わり始めている。3月採用広報開始、6月採用選考開始というスケジュールは継続されるが、2021年卒採用から、経団連が旗振り役を降りたことは、日本の新卒採用の転換点だ。

2020年卒採用で、実質的な選考スケジュールのさらなる前倒しは予想されるものの、採用手法自体に大きな変化があるとは思わない。だが、新卒採用が、現在のままで推移するとも思えない。「だまし面接」やインターンシップのあり方も変わっていくはずだ。

佃 光博 HR総研ライター

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つくだ みつひろ / Mitsuhiro Tsukuda

編集プロダクション ビー・イー・シー代表取締役。HR総研(ProFuture)ライター。早稲田大学文学部卒。新聞社、出版社勤務を経て、1981年文化放送ブレーンに入社。技術系採用メディア「ELAN」創刊、編集長。1984年同社退社。 多くの採用ツール、ホームページ製作を手がけ、とくに理系メディアを得意とする。

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