太陽光、価格引下げで「経産省VS業界」大紛糾 経産省が未稼働案件に大ナタ、頓挫の案件も

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メガソーラー発電所を多く手掛けるスパークス・グリーンエナジー&テクノロジーの谷脇栄秀社長は「当社でも、すでに融資契約を結んでいて着工している案件の中で、投資収益に影響を受けるものがある」と明かす。というのも、今回の改正案によれば、運転開始期限が設定されるためだ。現時点の案では系統連系工事の着工申し込み受領時から1年以内に稼働できない場合、遅れた分だけ買い取り期間が短くなる。

法改正ではなく、省令改正で買い取り価格を引き下げることについて、前出の江口弁護士は「FIT法で経産相に与えられている委任権限を逸脱する」と指摘する。

一方、FIT法では、電力の供給が効率的に実施される場合に通常要すると認められる費用に適正な利潤を勘案して買い取り価格を決めるとしている。「認定取得から年月が経過する中でパネルの価格も大幅に下落している。その結果として、当初予定していなかった超過利潤が生まれることが問題だと認識している」(経産省・山崎課長)。

経産省を支持する意見も

ただ、こうした未稼働案件が積み上がる事態は、FIT法が施行された2012年時点で想定されておらず、経産省も当時、導入促進を急ぐ中で、買い取り価格見直しや運転開始期限のルールを設けていなかった。

今回の経産省の方針を強く支持する意見もある。岡山県で国内最大のメガソーラーを稼働させた、くにうみアセットマネジメントの山﨑養世社長は「未稼働案件のFIT価格引き下げには賛成だ」と語る。「実現できるかどうか、はっきりしない案件のために貴重な系統容量が占拠されてしまっていることが再エネの導入を阻害している。こうした状況を是正することは正しい」。

その山﨑氏も制度変更によるマイナス影響を危惧する。「運転開始期限が1年後に設定された場合、案件が大型であるほど運転開始期限までに完成できないケースが多くなると考えられる。FIT期間が短くなって投資収益率が低下した場合に、事業中断も起こりうるし、投融資の回収が困難になるケースも考えられる」という。

また、山﨑氏は許認可の取得が終わらないために未稼働状態が長引いている案件について、「買い取り価格が下がることはやむをえない」としつつも、「その場合、安い価格のパネルへの変更を認めて欲しい」(山﨑氏)と主張する。

未稼働案件をめぐる問題は、FIT法制定当初、事業者に有利すぎるルールを認めてしまった後での軌道修正の難しさを物語っている。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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