太陽光、価格引下げで「経産省VS業界」大紛糾 経産省が未稼働案件に大ナタ、頓挫の案件も

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経産省によれば、今回の制度改正の背景には再エネをめぐるいくつもの大きな問題がある。第1に、電気料金に上乗せして徴収されている再エネ賦課金の増大だ。2018年度の1年間だけで消費税の1%分に相当する2.4兆円に達する。再エネの発電量がこのままのペースで増え続けた場合、2030年度時点に年間3.1兆円と想定された賦課金額を前倒しで到達してしまう。賦課金の急速な増大には、日本経済団体連合会など経済界の反発も強い。

また、高い買い取り価格の権利を持ったまま、一向に稼働しない案件が大量に存在している。送電線に空きが生まれず、新たな太陽光発電投資が行われにくくなるといった弊害も指摘されている。経産省によれば、2012~2014年度の事業用太陽光発電の認定案件のうち、未稼働のものは約2300万キロワットにものぼっている(同期間の認定案件のうちですでに稼働したものは約3000万キロワット)。そのうち、今回の制度見直し対象となるのは、2017年の改正FIT法施行時に運転開始期限が設定されなかったもので、1100万キロワット弱~1700万キロワット弱にのぼると見られている。

経産省案に事業者が反発

だが、劇薬とも言える今回の経産省の方針に対して、事業者の反発は大きい。

太陽電池メーカーや太陽光発電事業者など140社・団体でつくる太陽光発電協会は11月22日、「未稼働案件問題」に関する記者会見を開催した。増川武昭事務局長は「いったん約束された買い取り価格と買い取り期間が遡及的に変更されることになり、事業者や投資家、金融機関から、FIT制度の安定性や信頼性、事業予見性が損なわれることを危惧する声が多く挙がっている」と指摘。系統連系工事着工申し込み期限の先延ばしなど、軌道修正が必要だとの考えを示した。

同協会が11月に実施したアンケート調査には29社が回答。合計設備規模約310万キロワットのうち、「稼働できなくなる可能性」が「確実」「極めて高い」「高い」としたのは計228万キロワット。すでに投資した金額は約1680億円、未稼働となった場合の施工会社や金融機関などへの違約金等が約1210億円にのぼるという。

太陽光発電事業の法務に詳しいベーカー&マッケンジー法律事務所の江口直明弁護士は「これほど大きな制度変更であれば、周知期間として1年は必要。経産省の問題意識は理解できるが、訴訟が頻発する可能性がある」と指摘する。

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