イヴァンカ「メール問題」が長引きそうな理由 「親トランプ」メディアが変質?

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「生き馬の目を抜く」メディアとの微妙な関係について、これまでメディアのスーパースターを長く続けてきたトランプ氏にしても、まだ十分に理解できていないかもしれない。「親トランプ」メディアという立ち位置にいながら、トランプ氏と一定の距離を置き始めたフォックスニュースに、逆に、振り回される立場に立ってしまいかねない。

そうだとすれば、トランプ大統領は、中間選挙終盤での個人的人気を回復させた、メディア新戦略をテコに、メディア戦略を立て直すべきだろう。フォックスニュースを「えこひいき」しているだけでは、逆に、振り回されるだけで、何の得にもならない。

フォックスニュースの「上から目線」には、「報道の中立」というメディアの価値判断が働いている。トランプ大統領が、フォックスニュースのペースにはまったまま、メディア新戦略を打ち出せないでいると、これまでトランプ氏を熱烈に支持している人々の間でさえ、幻滅感が出てきかねない。このままでは長女イヴァンカ氏の危機を救うこともできなくなるだろう。

新たなメディア戦略でイヴァンカ氏を守れるか

イヴァンカ大統領補佐官という立場からみて、非常に気掛かりなことがある。メール問題に限らずに、より幅広い意味で「公私混同」があったのか、なかったのか。民主党議員のなかには、その点についてイヴァンカ氏を「宣誓証言」させたい、との政治的な思惑があることだ。これは重大問題である。

その「宣誓証言」については、これまでトランプ大統領がロバート・ミュラー特別検察官のチームによって、「偽証の罠」に追い込まれる危険性があるとして、大きな法的論点となっていた。それと同様な危険性を、イヴァンカ氏のケースは、特別検察官からではなく、下院議会から追及されることになる。

「反トランプ」メディアは、「頭脳明晰なイヴァンカ氏が何で、こんなミスを」と、一斉に報道している。その背景には、イヴァンカ氏が下院議会での「宣誓証言」に追い込まれ、その証言を通じて、「偽証」証言を引き出したいという、「反イヴァンカ」メディアの狙いがあると言っていい。

「知的なプライド」のある証言者ほど、「偽証の罠」にはまりやすいという。老獪で、やり手の議員にとっては、イヴァンカ氏は格好の獲物ということになる。イヴァンカ氏は知的であっても、タフで老獪だったヒラリー氏ほどの人生経験を積み重ねていない。

イヴァンカ氏は、国際的な人身売買の撲滅問題、働く女性の問題などで活躍し、民主・共和両党の議員たちとも協力してやってきた。「トランプ嫌い」を明言する両党の議員の間でも、イヴァンカ氏と友好的な議員は数多くいる。ただ、今回のメール問題について、イヴァンカ氏を擁護する意見は、目下のところ、ほとんど出ていない。

ところが、見逃せないのは、メディアのなかでイヴァンカ擁護論が出ていることだ。トランプ大統領にとって、イヴァンカ氏の危機を救うために、見落とせないポイントとなる。フォックスニュースだけを「えこひいき」すると批判されてきたトランプ氏が、メディア全体との関係性を修正するチャンスである。

その場合、トランプ大統領は、イヴァンカ大統領補佐官を政治的に守りながら、トランプ大統領自身は「反トランプ」メディアと対峙し、戦い続けるという両面作戦も考えられる。トランプ大統領のメディアとの新たな関係がどう展開していくか、見物である。

湯浅 卓 米国弁護士

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ゆあさ たかし / Takashi Yuasa

米国弁護士(ニューヨーク州、ワシントンD.C.)の資格を持つ。東大法学部卒業後、UCLA、コロンビア、ハーバードの各ロースクールに学ぶ。ロックフェラーセンターの三菱地所への売却案件(1989年)では、ロックフェラーグループのアドバイザーの中軸として活躍した。映画評論家、学術分野での寄付普及などでも活躍。桃山学院大学客員教授。

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