そこで、筆者が注目しているのは、これまで唯一の「親トランプ」メディアとして、論陣を張ってきたフォックスニュースが、中間選挙の直前の10月から「変節」したと思われることだ。トランプ大統領との関係に「ねじれ」が生じていると判断していい。
その「ねじれ」の具体的な内容とは、中間選挙の直前、フォックスニュースがトランプ大統領の全米各地での共和党候補への応援演説ラリーを、以後、中継しないという方針を打ち出したことだ。この新方針については、「フォックスニュースでさえも、トランプの応援演説会に飽きた」とヴァニティフェア誌(電子版)は伝えている。
同誌によると、トランプ大統領の演説会を生中継するより、フォックスニュースの著名なキャスターたちが、いろいろな角度から解説したほうが、視聴率を稼げるという判断が働いているという。つまり、フォックスニュースは、これまでの「親トランプ」の立場よりも、視聴率優先の立場へ転換したというわけだ。
この「親トランプ」メディアとの関係に「ねじれ」が生じたことに対して、トランプ大統領は、10月下旬以降、3大ネットワークを中心に、これまで以上に幅広く、独占インタビューのテレビ放映に応じることにした。著名キャスターたちと意見を戦わせる形で、メディアを利用するという新戦略に転じたのだ。
全米トップのテレビ視聴率男として名を上げたトランプ氏の「メディア勘」は衰えてはいない。メディア新戦略は功を奏し、トランプ人気は一気に回復した。「反トランプ」メディアとして名高いCNNテレビの解説で、ベテランジャーナリストのジョン・キング氏は「トランプ氏の国民的支持は史上最高」とさえ述べた。中間選挙の直前である。
トランプ氏の「メディア勘」は、的確に作用したと言える。その証拠に、中間選挙では、「反トランプ」メディアが予想した以上に、トランプ与党の共和党は善戦した。
盛り返したトランプ人気に冷や水?
中間選挙後、トランプ大統領は11月18日放送のフォックスニュースのベテランキャスターのクリス・ウォーレス氏との独占インタビューに応じた。そのウォーレス氏は、数カ月前に行った、ロシアのウラジミール・プーチン大統領との独占インタビューで見せた、脅えたような緊張した表情とは打って変わって、余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)の表情を見せた。
トランプ大統領の「激論の雄」としてのイメージアップ効果は、このフォックスニュースとのインタビューでは、まったく上げられなかった。それどころか、トランプ大統領に対するウォ―レン氏の「上から目線」とさえ言える余裕たっぷりの態度は、中間選挙でせっかく盛り返したトランプ人気に、冷や水を浴びせるような横柄さだった。
さて、フォックスニュース側は、トランプ大統領との強いコネクションを利用しながら、視聴率を取りやすい「ロシア疑惑」などを報じ、高い視聴率の維持を狙っている。ここまで「ロシア疑惑」が長引いているのは、「反トランプ」メディアだけでなく、「親トランプ」メディアの「視聴率戦略」に乗せられていると、分析することもできる。そのことにトランプ大統領は気づいているだろうか。
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