7月の参院選後、安倍首相は「これからの敵は野党ではない」と思ったに違いない。予想どおり是々非々の民主、維新、みんなの野党3党に自民、公明を合わせた5党による実質的な「総与党体制」が現実となってきた。
秘密保護は必要だが、焦点の特定秘密保護法案は基本的に権力監視機能の面などで制度設計に欠陥がある問題法案だ。だが、維新とみんなは修正案で合意し、与党時代の経緯を背負う民主党も法案制定に反対ではない。
手綱を握る菅官房長官によれば、安倍首相は2回目の今回は就任以来、「時間をかけて丁寧に説明し、国民と対話しながら、これくらいだったら大丈夫と見極め」という姿勢だったようだが、特定秘密保護法案など、持論の「戦後レジーム脱却」関係の問題では「理念派・強硬路線・猛進型」の地金が出始めた。そうなると、役割が大きいのは野党だ。
といっても、日本の政治は数年前から政治体制や外交の基本路線などの「大きな選択」では、一部の党を除き、政党間に決定的な違いがなくなり、各党は具体的な政策の構想力や実現力を競う時代となった。「1強」の安倍政権にとっては好都合な状況である。
安倍首相にすれば、確かにこれからの敵は「国会の野党」ではないだろう。だが、無視できないのが世論と市場の反応だ。第1次内閣は、とくに世論の離反がつまずきの最大の原因だった。二の舞いを演じれば、いま沈黙中の与党内反対勢力が勢いづく恐れもある。
小泉元首相が「脱原発」を叫び、「首相の決断次第」と迫っているが、「野党不在」状況をにらんで「世論結託型の強力新型野党」の役割を、と見定めているのかもしれない。国会での「1強与党」対「弱体野党」で代議制民主主義と政党政治が危機に直面しそうだが、「世論結託型の新型野党」勢力が危機克服の突破口となる可能性もある。
安倍首相はこだわりの「戦後レジーム」関係も含め、菅流の「現実派・対話路線・熟柿型」を軽視すれば、「1強」下でも、あっという間に政治の風景が一変しないとも限らない。「逆風、苦境、窮地に陥って体調悪化」という第1次内閣の悪夢の再現にご用心を。
(撮影:尾形文繁)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら