1年前の2012年11月14日、当時の野田首相が国会の党首討論で突然、衆議院の解散日を明言した。懸案の「1票の格差」問題について、小選挙区の定数を「0増5減」とする選挙制度改革法案の成立を交換条件に解散すると宣言し、12月16日に総選挙が実施された。
1年後の今月20日、この総選挙の無効を求めた訴訟で、最高裁の判決が出る。衆参の選挙で大勝した安倍首相は、次期参院選と衆議院議員の任期満了の16年まで、無選挙期間の「黄金の3年」を手にしたが、一点だけ気がかりなのは今度の最高裁判決だろう。
最高裁は現行選挙制度と定数配分について、11年3月の判決で「違憲状態」と判示し、「速やかに立法措置を」と促した。だが、野田首相は「0増5減」の法案を成立させただけで、従来の定数配分での総選挙を実施した。
その後、違憲訴訟が相次ぎ、今春までに高裁で違憲判決が続出した。国会はやっと6月に「0増5減」の区割り改正を実現した。
「立法措置を講じたのだから、最高裁は『違憲』や『総選挙無効』とは言わないだろう」と専門家の多くの与党議員は言う。「総選挙無効」だと、安倍内閣の正統性も、総選挙後の立法や国会決議の効力も、すべて否定され、大混乱となるから、最高裁もそんな判決は出せないという見方だ。
一方、最高裁が、小選挙区の「1人別枠」を放置して合理的期間内に制度改正を行わずに実施した12年総選挙は違憲という考えに立ちながら、諸般の事情を考慮して違憲判決を回避すれば、違憲立法審査権の形骸化を招くという懸念も根強い。
3月の高裁判決などを見ると、ひょっとして、最高裁は、区割り改正後の新定数による総選挙を一定期間内に実施することを停止条件にして、12年総選挙は無効という判決を出すかもしれない。期間内に総選挙を行えば、12年総選挙はさかのぼって有効とするという措置だ。司法が首相の解散権を縛ることができるのかという問題があるが、もしそんな判決が出れば、安倍首相は16年を待たずに、否応なしに早期の解散・総選挙を実施しなければならなくなる。
それでも、いまなら絶対に勝てるという自信があるのかもしれないが。
(撮影:尾形文繁)
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