佐賀・樋渡武雄市長がずばり「政策は商品」 アベノミクスという新商品を我々はどう評価する?

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写真:毎日新聞社/アフロ

10月下旬、佐賀県武雄市に出かけ、「図書館改革」で知られる43歳の樋渡啓祐市長をインタビューした。
将来、地元の首長に、と狙い定めて県立武雄高、東大経済学部を卒業後、総務庁(現総務省)に入り、目標どおり2006年に市長となった。
市の図書館をリニューアルし、今年4月にオープンさせた。
発想の転換で、レンタルショップの「ツタヤ」を展開する会社に運営を委託し、貸し出しと本・雑誌の販売を一緒に行う方式にした。1階フロアにコーヒーショップの「スターバックス」も入れた。大人気となる。人口5万人の武雄市で開館3ヵ月の入館者が26万人、図書貸し出し数も約2倍に伸びたという。

「判断の基準は、私の場合、直観。自分が行きたい図書館をつくる」と語る。市政に取り組む姿勢についても、「極端に言えば、『市民が主役』とは全然、思っていません。政策は商品。それを市民がどう評価するか。スピードが最大の付加価値」と歯切れがいい。

地方自治の現状をどう見ているのか、聞いてみた。
即座に「首長のほとんどは言い訳ばかり」と答える。
「地方分権一括法(2000年施行)ができたときと比べて、いまはまったく違う。地方分権は思いっ切り進んでいます。なのに、全国市長会などで、補助金や交付金が足りないと言う。特区もいりません。なくても、やろうと思えばできるから。制度の問題ではない。だが、多くの首長が『制度が悪い』と言う。それを聞いて、市民がそう思う。地方が浮揚しないのは、言い訳がまかり通っているから」とずばり言い切った。

トップダウン型の「樋渡流」には、乱暴で危なっかしい、合意形成軽視、という批判もあるようだが、批判は想定内、と市長は思っているに違いない。肝心要は「市民の評価」で、判定を下す民主主義の機能が何よりも重要である。
アベノミクスという新型商品を掲げて突っ走る安倍首相の命運も、「国民の評価」次第だ。われわれ有権者は「言い訳」に惑わされず、商品の真贋と虚実を見極める眼力を磨き、目を光らせなければならない。

塩田 潮 ノンフィクション作家、ジャーナリスト

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しおた うしお / Ushio Shiota

1946年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
第1作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師―代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤』『岸信介』『金融崩壊―昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『安倍晋三の力量』『危機の政権』『新版 民主党の研究』『憲法政戦』『権力の握り方』『復活!自民党の謎』『東京は燃えたか―東京オリンピックと黄金の1960年代』『内閣総理大臣の日本経済』など多数。

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