安倍首相を見ていると、7月の参院選の後、発言に変化が生じているように感じる。
9月のオリンピック東京開催決定のIOC総会でのスピーチで、東京電力福島第1原発の汚染水問題について、「状況はコントロールされている。影響は港湾内で完全にブロックされている」と大見得を切った。10月10~11日に熊本市で開催された「水銀に関する水俣条約外交会議」で流されたビデオ・メッセージで、「水銀による被害とその克服を経たわれわれ」と述べ、日本が水俣病を克服し、すでに解決済みと受け取られるような言い方をした。さらに22日、「1票の格差」是正の新しい選挙区割りの法案成立について、国会で、「最高裁の要請に応え、違憲状態が解消された」と答弁したが、法案では定数の「0増5減」が実現しただけで、「違憲状態解消」と唱えるのは牽強付会の論と言っていい。
第1次内閣では自己中心的な一方通行発信型の発言を連発し、意欲空回りに終わった。
1ヵ月前のインタビューで、菅官房長官も「第1次内閣の失敗の教訓は大きい」と話していたが、失敗の教訓を生かすという取り組みは、再登板の安倍首相の基本姿勢と見て間違いない。
第2次内閣では、聞き手に配慮して、エピソードをふんだんに盛り込み、柔らかな言い回しを心がけるなど、しゃべり方を工夫してきた。一方で、持論の憲法改正問題でも、改正要件を定める憲法第96条の先行改正について、4~5月、「熟議が必要。丁寧に議論していきたい」と語り、強引、強硬と受け取られるような言い方は慎重に避けた。
ところが、参院選勝利、高支持率、好調な政権運営で自信をつけたのか、急に口元が緩み始めた感がある。大言、強弁、こじつけと思える発言が飛び出すようになった。
3月にこの欄で、「安倍首相には『口ほどでもない』という面がある」と書いたが、強硬路線と強気の発言の割りには実際は安全運転だった安倍首相が、「軽い言葉」でお座なりの受け答えとその場逃れに走るなら、今度は「口先首相」と酷評を浴び、信用を失うだろう。
(撮影:尾形文繁)
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