「地方女子は進学しなくていい」風潮は本当か データで読み解く「男女の大学進学率」の差

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つまり、地方では

原因1:高卒就職先として第二次産業の割合が高い
原因2:女子より男子のほうが第二次産業に進む割合が高い
原因3:第三次産業のほうが学歴が重視される

という3つの原因により、

・男子は高卒で第二次産業に就職する

・女子は高卒で進学し第三次産業に就職する

というインセンティブが働くことになり、

「息子は無理して大学に行かせなくても……」

「娘は無理してでも大学に行かせたい……」

という傾向になるのです。これに先ほどの

(1)四年制大学進学(女子)
(2)四年制大学進学(男子)
(3)短期大学進学(男子・女子)
(4)就職

という進学費用の差が加わることで、四年制大学進学率は「男子>女子」なのに、短大を含めた進学率では「女子>男子」という統計結果になるのです。

これをひと言でまとめると、「地方において高卒で進学する割合は女子のほうが高い。ただし遠方で費用がかかる四年制大学に進学する割合は男子が高く、女子は短大など地元の学校に通う傾向が強い」となります。

ここまで見てきたように、都会のありよう、地方のありようは、それぞれ異なる条件における合理的な判断の結果であり、それぞれを「後進的・先進的」「頑迷・聡明」といった感情に訴えやすい二元論で切り分けられる単純なものではありません。

(編集協力:株式会社バーネット)

久保 哲朗 統計ジャーナリスト

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くぼ てつろう / Tetsuro Kubo

1970年、佐賀県生まれ。東京大学文学部卒業。長野県伊那市でシステムエンジニアとして働くかたわら、自らサーバーを立ち上げて、さまざまな統計データを収集・分析。「都道府県別統計とランキングで見る県民性」や年次変化に着目した「年次統計」など、データベースを駆使した統計サイトを複数運営している。代表作に『統計から読み解く 47都道府県ランキング』『47都道府県の偏差値』などがある。

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