「地方女子は進学しなくていい」風潮は本当か データで読み解く「男女の大学進学率」の差

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つづいて、「大学進学率の男女格差」を比較してみましょう。これは、短大を含めた大学進学者に占める女性の比率を比較したものですが、都道府県によって卒業生の男女比にバラツキがあるため、単純に女性の比率を比較すると、もともと卒業生に女性が多いところではその比率も高めになってしまいます。そこで、大学進学者に占める女性の比率を、卒業生に占める女性比率で割ってバラツキを調整しました。これを数式で表すと、

女性比率=「大学進学者に占める女性の比率(%)」÷「卒業生に占める女性比率(%)」となります。比較した結果は以下のとおりとなりました。

■大学進学者に占める女性比率

これを見ると、女性比率は都市部よりも地方で高くなっていることがわかります。他の要素との相関を見ても、生産年齢人口との相関係数が-0.609、最低賃金との相関係数が-0.535といずれも負の相関があります。つまり、生産年齢人口が少なく最低賃金が低い地方では、大学進学者に占める女性の比率が高いのです。

となると、冒頭で引用した

地方などでは「娘は無理して大学に行かせなくても……」といった考えが根強くあるとされる。

とは正反対に、このデータを見る限り、地方では「息子は無理して大学に行かせなくても……」という風潮のほうが強いと言えそうです。

冒頭で示したこのマトリックスでいうと、地方では、四年制大学だけをくらべると男子(A)>女子(B)ですが、短大も含めると女子(B+D)>男子(A+C)という関係になっているのです。

実際に、地方で子育てをしているわたしの肌感覚でも、中学を卒業して工業高校など技術系高校に進み高卒で就職する男子のほうが、商業系高校などから就職する女子よりも多い印象があります。

その背景にあるのは地方と都市との産業構造の違いです。日本全体の特徴として、都市部は第三次産業が多く、地方は第二次産業が多いという傾向があります。

第二次産業従業者数

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