しかし、皆さんは不思議に思わないだろうか? なぜ、最大5万円という決して安くはない料金を払ってでも、退職代行サービスを利用する人がいるのか。退職自体は労働者の権利として認められているため、退職届を提出すれば、早ければ2週間で退職することができる。
それでも、退職代行サービスを利用せざるを得ない状況を作り出している背景について、考えてみたいと思う。
弊社を訪れる相談者の話を聞いていると、退職代行サービスを利用するケースには、大きく3つのケースがある。
実際に相談に来る事例のほとんどは、この「パワハラ上司」による退職ケースとなっている。パワハラ上司は、退職代行を依頼する理由となっているだけでなく、退職の直接的な理由にもなっていることが多い。
日常的に高圧的、かつ部下の人格否定に近い叱責を行う傾向があり、退職者は上司に対して、嫌悪感を通り越して恐怖心が芽生えてしまっている。上司の意にそぐわないことを言えば、叱責されることがわかりきっているので、退職を切り出したくても、自分では切り出すことができない状況がある。
理由をつけて辞めさせないケースも
引き継ぎが完了するまで退職できず、その引き継ぎに時間がかかりすぎるケースも少なくない。業務が専業化され、ある特定の業務をほぼ1人で担当するなど、属人化されていたり、引き継ぎのためのマニュアルがなかったりといった職場に多く見られる。
そのため、自身の業務をゼロからマニュアルに落とし込み、後任を育てない限り、辞められない状況となっている。時には人員不足のため、「後任者が採用されるまで」と言って、退職を引き延ばす会社もある。結果として、退職したい時期に退職ができなくなり、場合によっては退職を諦めるというケースもある。
一度は退職の意向を上司に伝えても、「一旦預かる」と言われたまま、一向に話が進まないケースもある。上司から退職の手続きを進めることはなく、自分から退職の話をしても、「退職の原因となっている状況を改善している」「もう少し時間をかけて考え直してみては」と、時間を稼ぐような対応が多い。
こうしたことが起こる背景には、評価制度や人員不足が大きく影響している。特に退職者が出ると管理職にとっては自らの査定に響くため、ネガティブな評価を避けたいと考える上司が多いように感じる。人員面でも、退職者が出ると業務を分散させなければならず、残った現場社員の負荷がさらに増す。2のケースと似ているが、長期戦に持ち込むことで退職への気持ちが沈静化する、退職を諦めることを期待しているようだ。
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