業績伸び悩むメガバンク 山積みの課題
不良債権処理、公的資金完済という大きな課題を乗り越え、新たな成長ステージのとば口に立つメガバンク。はたして次の時代の成長戦略を描くことはできるのか。(『週刊東洋経済』6月2日号より)
3大メガバンクの2007年3月期決算が出そろった。
6000億円を超える巨額の貸倒引当金の戻し入れ特別益を享受した三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)のように、05年度は各グループとも空前の好決算を記録。しかし、06年度は一転、連結純利益は3メガとも前期に比べ減益の決算となった。
原因の一つは、グループ傘下、もしくは親密な消費者金融部門の業績悪化だ。
MUFGの場合、三菱UFJニコス(連結子会社)とアコム(持ち分法)の2社向けに1300億円のマイナス影響が出た。三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)も、持ち分法対象会社であるプロミスが、のれん代の一括償却などで1050億円の減益要因となった。
利息返還損失引当金の積み増しなどで債務超過となり、3月に再建策を発表した信販大手、オリエントコーポレーション。この再建策を支援したみずほフィナンシャルグループ(MHFG)も優先株式の併合など処理を実行した結果、相当額のマイナス影響が出た模様だ。
株価低迷でM&Aも
07年度はこうした処理損失も消え、MHFGとSMFGが最終増益を見込む。「コンシューマーファイナンス部門は一つの戦略分野。業務運営の抜本的見直しが急務だが、依然大きなポテンシャルを持っている」(SMFGの北山禎介社長)。1株当たりの配当でMUFGが1万4000円、MHFGとSMFGがともに1万円とするなど、配当性向で15%前後となる株主還元策も打ち出した。
各グループは、公的資金返済のために切り詰めてきた経費を積極的に増やし、攻めの経営姿勢にも転じている。12年ぶりのベースアップで労使が協議中の住友信託銀行とまではいかないものの、賞与の増額や、いったん縮小した海外拠点の展開(SMFGのドバイ支店、MHFGのミラノ支店など)を開始している。
しかし、昨年公的資金を相次いで完済したとはいえ、税務上の繰越損失解消には「あと3~4年かかる」(MUFGの畔柳信雄社長)。まだ病み上がりの状態であるうえ、肝心の本業の収益力もやや力強さに欠ける。
貸し出しと預金の金利差=利ザヤは、06年度下期を底に反転上昇し始めたようだ。金利上昇局面に入ると、貸出金利に先んじて預金金利が上昇し、一時的に収益圧迫要因となるが、銀行経営にとって中長期的には収益拡大要因になるはず。しかし、各メガトップの口からは「利ザヤをどんどん上げていけるかというと、優良企業向けほどそう簡単ではなく、楽観的に見ているわけではない」(畔柳社長)と“悲観論”が飛び出す。
ここ数年、各グループが力を入れている手数料関連収益も伸び悩んでいる。MHFGは、法人向けソリューション関連の手数料収入が初めてマイナスとなった。リテール分野でも、三菱東京UFJ銀行がコンビニATMの利用手数料を無料にするなど、手数料無料化の流れが強まっている。
時価総額9兆円から15兆円のメガバンクグループとはいえ、海外の大手金融グループに買収されるリスクも、ないとは限らない。海外では、オランダの大手銀行・ABNアムロをめぐるM&A合戦が繰り広げられているのだ。
「日本の金融機関は社会インフラになっており、ものすごく儲かるビジネスモデルではない。(日本の銀行を)買収すると利益率は間違いなく下がるので、外国の金融機関の株主は許してくれないのではないか」(MHFGの前田晃伸社長)。かねて株価が割安と指摘されるメガバンクは、本当に買収対象とならないのか。収益力がカギの一つを握ることは間違いない。
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