東急7700系、銀色電車のルーツがついに引退 さびない車体、半世紀経ても「傷みなし」

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一方、約30年前に7700系に改造されなかった車両は、各地のローカル鉄道に移籍した。現在も走っているのは弘南鉄道(青森県)、福島交通(福島県)、北陸鉄道(石川県)、水間鉄道(大阪府)の4社だ。最近は「元東急7000系が走る鉄道」という共通点を生かした横のつながりも生まれている。

きっかけとなったのは弘南鉄道だ。同社は存続問題が浮上した大鰐(おおわに)線の活性化策として、2013年から7000系に同社の旧型車両を模したラッピングを実施していたが、2016年からは他社で走る7000系を再現する企画を始めた。

かつて秩父鉄道を走っていた旧7000系を模した弘南鉄道の車両(写真:弘南鉄道)
水間鉄道のデザインを再現した弘南鉄道の車両(写真:弘南鉄道)

第1弾はすでに引退した秩父鉄道(埼玉県)の、正面に青ラインが入ったデザイン。続いて翌2017年には水間鉄道と連携し、お互いにそれぞれの鉄道のカラーを模した車両が走り出した。今年11月には福島交通と北陸鉄道のカラーを再現した車両も登場している。

これらの企画を推進したのは、弘南鉄道の「オフィシャルパートナー」として活動する渡辺康弘さん。7000系を運行する各鉄道のコラボ企画「プロジェクト7000」のリーダーとして、各社連携によるグッズ製作なども計画する。今後は元東急の電車を運行するほかの鉄道にも輪を広げていく予定だ。

「7000系、元東急車両という縁を通じて地方私鉄同士が連携することで、単体でイベントなどを行うより各線の注目度を高められる」と渡辺さん。従来はなかった各社間の技術面での交流も生まれたといい「有益な結び付きになっている」という。

まだまだ現役続行

登場から半世紀を経た今も各地を走り続ける7000系だが、今回東急線から姿を消す7700系も活躍の場を移して現役を続行する。

新天地となるのは、三重県の桑名と岐阜県の大垣を結ぶ養老鉄道。15両が譲渡され、同線の「新車」として2019年から運行を開始する予定だ。同鉄道では今後30年程度使う予定という。さびないステンレス製車両ならではの「長寿車両」になる見込みだ。

新たに広がる7000系ファミリーの輪に、「プロジェクト7000」の渡辺さんは「ぜひ養老鉄道とも連携を図っていきたい」。養老鉄道の担当者によると、同社にはすでに鉄道ファンから「今後もかわいがってください」「運行開始したら乗りに行く」といった声が寄せられているといい、「できることがあればやっていきたい」と話す。

今では当たり前の存在であるステンレス製電車の礎となった7000系と7700系。軽くてさびない新世代の車両を目指して生まれた銀色の電車は、半世紀を経ても輝きを失わない車体にさまざまな人々の思いを乗せ、これからもまだまだ走り続ける。

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小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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