「双子の妊娠・子育て」の決して甘くない現実

50年で割合が2倍になったのに情報が少ない

実際に私もこのままでは虐待をしてしまうと、児童相談所に電話をしそうになったことがある。多胎の母親であれば誰しも一度は、この感情を抱いてしまうのではないだろうかと個人的に思う。

取材で集まった双子を持つ母親の体験談をいくつか紹介しよう。

「双子育児がつらすぎて、一時期は泣いてばかりいました。2人同時に風邪を引いたときなんて最悪で、ごはんが食べられないから泣く、眠たいのにしんどくて寝られないから泣く。1人なら抱っこして集中的に見てあげることができますが、2人だと同時に抱っこするわけにもいかず、1人を抱っこしては降ろして、1人を抱っこしては降ろしての繰り返し。降ろすと泣くので、2人とも永遠に泣いている。

もうその時はお手上げ状態で、私も2人と一緒にずっと泣いていました。それを見かねた夫が保育園に入れてくれる手配をしてくれ、それで心が楽になりました。やはり離れる時間は大切で、今まで2人がストレスだったのが、離れたことによってようやくかわいいと思えるようになりました」(静岡県在住・児玉由衣さん・30代、仮名)

「担当の保健師さんにいくら双子育児がつらいといっても、やはり経験がないのでわかってもらえません。ファミリーサポートなど地域の方々が助けてくれるシステムもありますが、双子なので料金も倍かかり、家計が厳しく預けることもためらわれます。保育園も働いてないので厳しいですし、親も遠方のため助けを求めることもできないのが現状です」(愛知県在住・野田明子さん・30代、仮名)

「双子と年子ではまったく育児に対するストレスが違います。すべてが同時。どちらかが待てるだけでも、まったく大変さが違います。こちらが言うことがある程度理解できるまでは、休む暇がなかったですね。双子サークルにも当初は参加していましたが、子ども2人を連れだすだけでも一苦労なので、足が遠のきました。家から出て自転車や車に乗せるのも1人より倍の労力と時間がかかるわけです。

買い物も大変です。歩く前だとベビーカーは大きくて邪魔ですし、歩くとなると2人を見ながら余裕のある買い物なんてできない。電車に乗ったときは周囲にベビーカーで嫌な顔をされ、2人して騒ぐのでまた嫌な顔をされ、最後は2人してぐずるので収拾がつかなくなり、途中下車してタクシーで帰ってきました。視線が痛いっていうことを考える余裕がないほど、2人の子どもを同時に見るのは大変です」(大阪府在住・生田彩さん・20代、仮名)

情報格差をなくすには

「多胎支援は25年くらい前から国が力を入れていますが、いまだに何も変わっていません」と大木教授は指摘する。

一時は厚生労働省(旧厚生省)からも双子専門の冊子が発行されたが、定着せずに終わった。保健医療の専門家は多胎に対する関心が低く、また、多胎に関する専門的な知識を得る機会が少ないので自信をもって保健指導ができない。

最近は多胎専門の冊子を母子手帳と一緒に渡したり、地域の多胎サークルに力を入れたりしている自治体もあるが、まだまだ少数派だ。そうなるといちばんの情報源は母親同士。ただ、就労している母親はママ友サークルにも参加できないため、情報格差が起こることになる。

多胎児家庭が持つ多くの課題を解決するためには、地域において当事者を中心に行政、民間、教育、研究の専門職が連携し、議論や情報交換を進める必要がある。

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