「双子の妊娠・子育て」の決して甘くない現実 50年で割合が2倍になったのに情報が少ない

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「多胎は妊娠、出産、育児を通し、さまざまな困難が立ちはだかります。多胎児の6割弱が早産児、7割強が低出生体重児です。

死産率・周産期死亡率・乳児死亡率はいずれも近年大幅に低下していますが、単胎児と比較すると依然2~5倍程度、脳性麻痺は5~10倍高い。ほかにもコミュニケーション能力の遅れ、学習障害、言語発達の遅れ、注意欠陥多動性障害が多いという報告も多くあります。正常範囲内の成長や発達も遅れる傾向にあります」

海外では多胎のリスクを取り扱う場合、「慎重になるように」という趣旨のガイドラインを出している国もある。しかし、日本ではまだまだ多胎妊娠の妊婦のメンタルをフォローする環境が整っていない。産科医の対応もまちまちで、リスクをちゃんと説明するケースもあれば、かえってリスクをリスクと思わせないように話をする場合もあるようだ。

実際に患った妊婦でなければ知らないリスク

実は筆者である私自身、妊娠中にトラブルに見舞われたひとりだ。私のケースは一卵性特有の疾病である双胎間輸血症候群(以下、TTTS)を起こし、片方の子どもが脳性マヒになった。TTTSとは一方の胎児に羊水や血流が流れる胎盤のトラブルで、原因は突き止められておらず予防することができない。一卵性双子であればいちばんのリスクであることが知られているが、TTTSになる妊婦は1割であるため、実際に患った妊婦でなければ双子の母親であっても知る人は少数だ。

私と同じくTTTSを経験した兵庫県在住の三谷圭子さん(30代、仮名)も、双子のうち1人を亡くし、生まれた1人にも障害が残った。

三谷さんが30週目の検診の際、産科医が長めにエコーをするので、「どうしたんだろうって不思議に思った瞬間、医者に申し訳なさそうに『残念ながら、ひとりの赤ちゃんの心拍が止まっています』と言われました。最初は何のことだかわからず戸惑っていると、医者が続けて『今すぐ出してあげなければもう1人の子どもの命も危ない。これから帝王切開します』と、心の準備も何ないまま夫や家族に連絡するように促され、泣きながら電話したことを今でも鮮明に覚えています」。

三谷さんはこう続ける。

「本当につらかったのはそのあとです。未熟児で生まれてしまったため、しばらくの間子どもはNICU(新生児集中治療室)にいました。その後、退院前のMRIで脳に障害があることがわかりました。今年3歳になりますが、いまだに歩くことはおろか、お座りも厳しい状況です。しかし時間とともに子どものことを受け止めることができ、今は残された子どもの笑顔が癒やしでどうにか頑張れています」

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