② むしろ一人がよくなった
もう1つの原因がこちら。一人でランチを食べている人たちを見ていると、スマートフォンをテーブルに置いて、イヤホンをしながら食べている人が多いようです。見ているのは動画。日頃ちらっとその画面を見てみると、日本のドラマや海外ドラマが多く、アニメを見ている人もちらほら。好きなユーチューバーを見ているという人もいます。
中華料理屋で私の隣席に座っていたある女性は、スマホの背面についたパーツを使い、画面を見やすい角度に固定していました。顔を完全にスマホ側に向けつつ、料理のほうはほとんど見ずにチャーハンを食べており、もう完全に「自分の世界」といった感じ。食べ終わってからも、しばらく動画を見続けてから席を立っていました。
人と一緒にいるより一人で息抜きのためのランチへ
「生活定点」には人づきあいについて、こんなデータがあります。
男性:1998年27.2%→2018年35.0%
女性:1998年19.0%→2018年29.0%
人と一緒にいることを敬遠する意識が、20年間で男女とも強くなっているようです。さまざまな要因があるのでしょうが、携帯電話・スマホの登場により、一人でも楽しく過ごしやすい環境が急速に整ったことで、生活者が“ひとりに慣れた”ことも影響しているのではないかと考えられます。
近しい同僚同士で声をかけ、連れだって食べに行くランチは、親睦や情報交換のよい機会。けれども、行く店の選定から会話まで相手に気を遣うことになるし、自分の時間は過ごせません。
海外ドラマにハマっているという知人女性に話を聞くと、「とにかく1話でも早く先に進みたくて、電車の中でもお店の中でも時間があれば見てしまう。だから、食事はほかの人が一緒じゃないほうがいい」と、そんな声が返ってきました。
かつてより多忙さが増し、かつ、スマホでさまざまなコンテンツをいつでも楽しめるようになった今日、ランチの時間は、人と一緒にいるよりは「自分のペースで、好きなことをして過ごすための息抜き」の時間にしたい。そんな意識が強まっているように感じられます。
平成の初めから終わりにかけて、ランチは「親睦」の場から「解放」の場へ。
次の時代の飲食店はもしかしたら、お客さん同士の目線が合わない座席配置やおひとり様専門店など、「解放」仕様のサービスが、もっともっと増えていくのかもしれません。
「生活定点」調査概要
調査地域:首都40Km圏、阪神30Km圏
調査対象:20歳-69歳の男女3,080人(2018年・有効回収数)
調査手法:訪問留置法
調査時期:1992年から偶数年5月に実施(最新調査は2018年5月16日-6月15日)
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