ソフトバンク、利益・投資のバランスに難しさ 逆風下での上場承認
NTTドコモ <9437.T>は10月31日、現行の料金プランを見直し、2019年4─6月期に2─4割程度の値下げを行うと発表した。1年当たり最大4000億円規模の顧客還元を実施する方針で、同社は来期、5年ぶりの営業減益となる見通しだ。ドコモの減益覚悟の値下げは、他の2社にとってプレッシャーになるのは間違いない。
ソフトバンクはこれまで、利益創出については比較的柔軟に対応してきた。前期に減益となったのも、顧客基盤拡大に向けた投資を優先させたためだ。ある幹部は「成長のために投資が必要という局面では、損益はキャッシュよりも柔軟に考えている」とスタンスを説明していた。しかし、上場すれば株主の手前、柔軟な対応もとりにくくなる。
ソフトバンクが5日、通信事業に携わる人員を4割削減し、成長事業に振り向ける方針を打ち出したのは、値下げをしても、利益を出せる体質づくりを進めるためだ。「低価格のいろいろなサービスをやっていくためには、業務の効率を良くしていかなければいけない」。孫社長は、配置転換の背景に政府の値下げ圧力があったことを素直に認めた。
日本テレコムの証券コードが復活
アイザワ証券市場情報部アナリスト、阿部哲太郎氏は、人員削減に加え、人工知能(AI)や定型業務を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用してコストを引き下げる予定であることを指摘し、「目先は大きな減益になることはないのではないか」との見方を示した。
ソフトバンクの証券コード「9434」。かつての固定電話会社「日本テレコム」がつけていた証券コードだ。日本テレコムは親会社が変わる中で2005年に上場廃止となり、その後ソフトバンク傘下に入った。今回、固定電話から携帯電話を中心とする会社に姿を変え13年ぶりの復活となる。この番号でまた新たな会社に生まれ変われるのか。
「低価格になるから減益にしても良いというのは、ゼロから創業したソフトバンクとしては絶対に言い訳として使いたくない」。孫社長は語気を強めたが、長い目で見た利益を確保するために、痛みを伴う厳しい判断を求められる場面も出てきそうだ。
(志田義寧 取材協力:杉山健太郎 編集:石田仁志)
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