2014年、日本が本格復活する条件とは? みずほ総研チーフエコノミスト・高田創氏に聞く②
企業は、前向きな行動をとって進化を
自己資本比率についても同様です。自己資本比率を上げることを目的と思っている企業がありますが、そんなことが企業経営の目的ではありません。また、自己資本の高い企業をアナリストも評価してきましたが、それも行き過ぎていた面がありました。企業が生き残るために、やむをえなかった時期があっただけなのですが、企業の目的はリストラではありません。
――ぜひ、声を大にして経営者の方々に伝えて欲しいですね。
経営環境はこれまでの円高から円安に変わりました。資産価格も底入れをして、先行き見通しにも期待感が出てきました。日本のバランスシートの調整も終わりました。それらを認識すれば、もう少し前向きな行動とってもいいのではないでしょうか。環境が変わった中での企業の進化の形は、従来とは違ったものになると思います。
――企業も変化・変革を迫られているということですね。
そうです。レジーム・チェンジと言いますか、「草食系」から「肉食系」へ。私たちが若い頃は、日本人は「エコノミックアニマル」と呼ばれましたが、今の若い人の前で、エコノミックアニマルという言葉を出すと「それはどこの国のことですか。中国のことですか」という反応が返ってきます。それくらい、エコノミックアニマルという言葉が死語になってしまっています。そこから新しい転換が必要だと思うのです。
このチャンスをものにできないと、「やっぱりダメだ」というマインドに陥ります。絶対に避けなければなりません。先に挙げましたが、「薪が完全に乾いた状態で点火すること」だと思います、湿った状態の薪に火をつけて「やっぱり燃えないじゃないか」とあきらめのマインドに戻ることを回避することです。
――うまくいけば、「失われた20年」は政策の失敗ということになりますか。
政策の失敗もあるでしょうし、それだけバブルの崩壊の「震度」は大きかったといえるのかもしれません。金利を大幅に上げたこともありますが、バブル時代はある意味で日本がフロントランナーでした。たとえば、アメリカは日本のバブル崩壊からの一部始終を見ていますから、同じバブル崩壊でも、回復までの時間は短く済む方向で進んでいます。それでもQE3縮小実行に、なかなか踏み切れないでいます。また、やはりアメリカのバランスシート調整が終わったことによる、為替(円安)の影響が大きいと思います。
――為替が安いと、かなりの部分がうまくいくということですね。
そうです。今回の著書の中で、現在の状況は、バブル崩壊後、3つの条件が揃った初めてのときと書きました。すなわち、①バランスシートの調整・改善など企業のダイエットが終了したことに加え、②円安基調が続くこと③(株や不動産の価格上昇のように)先行きに期待が持てるという意識、だと思います。日本経済の復活を確実なものにしるためにも、ぜひとも13年度中に「薪を十分に乾かす努力・準備」を、行っておくことです。
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