人工知能は「役立たず階級」を生み出すのか 「ホモ・デウス」が示唆する人間不要の未来

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結果として見れば、総じて科学技術は人々をより幸福にしたと言うことができる。にもかかわらず、科学技術が人々の幸福を必然的に高めるという考えは、宗教じみたただの信仰にすぎない。

核戦争で人類が滅んだ世界線(別の歴史をたどった世界)についても想像を巡らせるべきだろう。ホモ・サピエンスが、今なお生き残っているのは僥倖というほかない。

人工知能は人間の脳を凌駕する

3つ目の「ジョブズのリンゴ」は、人類にとっての「シアワセ林檎」(ゲスの極み乙女。の楽曲名だが、ここでは人類を幸せにするリンゴを意味する)になりうるだろうか?

ハラリによれば、科学革命の後の人間至上主義の時代に、森羅万象が科学の対象として分析されたが、人間だけは分割できない神聖な魂によって自由な意思決定を行う唯一の例外的な存在に祭り上げられていた。

だが、近年の神経科学と情報技術の発達によって、人間の知的振る舞いは脳内の「電気化学的プロセス」に応じたアルゴリズムの作動にすぎないのではないかと考えられるようになっている。

人間の脳とコンピュータは、アルゴリズムにしたがって作動するという意味で本質的な違いはない。そして、コンピュータ上のアルゴリズム(人工知能)は、いずれ人間の脳を凌駕するようになるとハラリは断じている。

意識を持たないアルゴリズムには手の届かない無類の能力を人間がいつまでも持ち続けるというのは、希望的観測にすぎない。(ハラリ『ホモ・デウス』)

そうすると、人間は買い物から恋人選びに至るまで人生のあらゆる決定を人工知能に任せるようになるだろう。それはすでに、アマゾンのレコメンデーション(お薦めの書籍などの提案)システムや恋人マッチングアプリなどによって半ば実現している。

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