人工知能は「役立たず階級」を生み出すのか

「ホモ・デウス」が示唆する人間不要の未来

『すべてのモノのインターネット』の偉大なアルゴリズムが、誰と結婚するべきか、どんなキャリアを積むべきか、そして戦争を始めるべきかどうかを、教えてくれるでしょう。(ハラリ『ホモ・デウス』)

ただし、ディストピアじみてはいるものの、生身の人間の脳よりも優れたアルゴリズム様の決定に従うことで、人類はより幸福になるかもしれない。

より深刻なのは、人間の脳を凌駕したアルゴリズムの出現によって、生身の労働者が不必要になるという事態だ。多くの仕事が人工知能に任せられるようになり、人間はお払い箱となる。

ほとんど何でも人間よりも上手にこなす、知能が高くて意識を持たないアルゴリズムが登場したら、意識のある人間たちはどうすればいいのか?(ハラリ『ホモ・デウス』)

ハラリは、「Useless class」という言葉を用いており、これは「無用者階級」「役立たず階級」「不要階級」などと訳されている。人類全員ではないにせよ、大量の役立たずの人間が発生するという。

二十一世紀には、私たちは新しい巨大な非労働者階級の誕生を目の当たりにするかもしれない。経済的価値や政治的価値、さらには芸術的価値さえ持たない人々、社会の繁栄と力と華々しさに何の貢献もしない人々だ。この「無用者階級」は失業しているだけではない。雇用不能なのだ。(ハラリ『ホモ・デウス』)

テクノロジーで「不死の超人」を目指す人類

その一方で、人類は、戦争と飢餓、疫病の克服には安住せず、次なる目標に向かって邁進していくという。それは、テクノロジーによって肉体をアップグレードして、不死の超人になることだ。神を殺した人類は自ら「ホモ・デウス」(神人)にならんとする。すでにグーグルは、「死を解決すること」をヴィジョンとして掲げた「キャリコ」という子会社を設立している。

神戸大学の松田卓也名誉教授は、『ホモ・デウス』の描く未来を「不老階級」と「不要階級」の分化としてまとめている。お金持ちの「不老階級」は、実際には不死にまでは至らないにせよ肉体をアップグレードしながら末永くハッピーに生きる。「不要階級」は、仕事がないがために貧しく、生まれたままの肉体をこれまでどおり老化させながら慎ましく死んでいく。

『ホモ・デウス』の未来予想図に従えば、「ジョブズのリンゴ」も多くの人々にとっては毒リンゴとなる。

それを「シアワセ林檎」に変えるにはどうしたらいいのか? 私たちは今から真剣に議論しておくべきだろう。それとも、こうした七面倒な議論もアルゴリズム任せにしてしまおうか?

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