この国はしばらく高齢者対策に追われることとなります。企業にとって「変化」はチャンスでもあるわけですから、広がる高齢者マーケットにいち早く対応した企業や、新たなニーズに応えられた企業は成長するでしょう。日本の企業がやらなければ、海外企業の後塵を拝することになるでしょう。最近、私は外国メディアの取材を受けることが少なくないのですが、世界の企業が日本の高齢者マーケットに熱い視線を送っている様子がヒシヒシと伝わってきます。
個人も同様です。若いうちから老後生活を見据えたキャリアプランを持ち、いつまでも第一線で活躍できるよう努力する人は「良き老後」「良き人生」を送ることができるでしょう。
とは言え、私どもに残された時間は多くはありません。わずか50年の間に勤労世代が40%も少なくなるのですから、まさに「国家の非常事態」です。これまでの慣習や社会の仕組みを大幅に見直さなければ、危機を脱することはできないでしょう。
だんらんや余暇の時間が消える?
人口減少問題の恐ろしさを見誤ってはなりません。先に「全員が働かなければならない社会が到来する」と述べましたが、これはみんなが余裕を持てない社会になるということです。多くの企業では、若手社員はもちろん、40代や50代になっても、がむしゃらに働かざるをえなくなります。それは生産性を低下させるだけでなく、新たなことに挑戦する機会も損ねてしまいますので、イノベーションはもとより新たなファッションや文化、芸術も起こりにくくなるでしょう。
個人もこれまで行政や企業から受けていたサービスが受けられなくなるわけですから、ゆとりがなくなっていくことでしょう。有償無償のサービスを享受できていたからこそ、だんらんの時間や余暇の時間を持てていましたが、そうした時間が持てなくなるかもしれません。
繰り返しになりますが、政府・企業・個人は、この人口減少と少子高齢化の問題に一刻も早く真剣に対峙し、「戦略的に縮む」ための取り組みを急がなければなりません。
中原:本当に怖い話ですね。そうならないために、私たちは人口減少社会がもたらす未来を正しく認識して危機意識を持ったうえで、しっかりとした対応を取ることができる環境を整えていく必要があります。また、それと同時に、人手不足を解消するAIの効果的な使い方や、AIに淘汰されない人材づくりを実証的に研究したうえで、河合さんが予見するような社会から少しでも良くなるように実行していかねばなりません。
そういった意味で、新刊『AI×人口減少』は今の日本の現状に強い危機意識を抱きながら書きました。日本の現状を打破しようと頑張っている企業や地方自治体を応援するためにも書きました。私は国民一人ひとりのレベルで意識を変えていかないと、この国は変わらないと思っております。これからの子どもたちの先々のことを思うと、日本を少しでも活力のある国にしたいと心から願っています。
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