アマゾン従業員が賃上げを心底喜べない理由 ボーナスも株式ももらえなくなる?

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ニューヨーク・タイムズではテキサスやケンタッキーなど全米各地で数人のアマゾン従業員に取材したほか、フェイスブック上で数多くの従業員が交わした議論に目を通した。取材に応じてくれた従業員は皆、給与明細を見せてくれたが、実名報道を許してくれたのはごく一部だった。

ケイティ・アイバーは、ミネアポリス(ミネソタ州)近郊の配送センターで夜間シフトで働いている。仕事は返品されてきた商品の処理だ。この地域は人手不足で売り手市場なため、アイバーの時給も15ドルを超えている。

賃金制度改変の対象は35万人

賃上げ発表後、初の出勤日だった11日、シフト開始時に行われる全員参加のミーティングでアイバーは自分の時給が1ドル引き上げられることを知った。

だが同時に、精勤手当と、生産性に連動した手当が月ごとに支給される「変動報酬プラン(VCP)」は廃止となる。また、高騰しているアマゾン株の付与も受けられなくなる。これでは賃上げでも手取り金額は下がるだろうとアイバーは言う。

これでは会社から「ありがとう。休暇を取ってくれて助かるよ。さあ、低くなった給料だよ」と言われているようなものだとアイバーは言う。ちなみにアイバーをニューヨーク・タイムズに紹介してくれたのは、この地域の東アフリカ系労働者の団体アウッド・センターだ。

アマゾンは声明で、賃上げは株式報酬やVCPの「段階的廃止(による減少分)を埋め合わせる以上のものだ」としている。「より即時的で前もってわかる」一般的な賃上げだというのだ。

今回の賃金制度の改変の受益者は25万人以上の従業員および、10万人の季節従業員。同社では英国でも同様の制度変更を発表している。ドイツ銀行の推計では、賃上げ分の総額は「アマゾンの2019年の売り上げ予測額の1%未満」だという。

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