アマゾン従業員が賃上げを心底喜べない理由 ボーナスも株式ももらえなくなる?

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アイバーが見せてくれた給与関係の書類によれば、8月のVCP手当は1時間あたり1.28ドルだった。つまりクリスマス前後の3カ月間の手当は1時間あたり2.50ドル以上になるはずだった。これは現行の時給に1ドル足した額よりもずっと高い。

株式も勘定に入れれば、下落幅はさらに大きくなる。これまでにもらった株を持ち続けることはできても、今後新たに与えられることはない。

年末商戦時に「ストする」という声も

アマゾン従業員が多く集まるフェイスブックのグループでも、報酬制度の変更に怒りの声が上がっている。

制度変更の発表があった10月2日には、グループのモデレーターが削除せざるをえないようなネガティブな投稿が相次いだ。そこでモデレーターは、ネットでガス抜きをするのではなく、シアトルの本社に手紙を送るように呼びかけた。

感謝祭(11月の第4木曜日)の翌日で毎年注文が殺到する「ブラックフライデー」にストライキを考えている同僚がいる、と書き込んだ人もいた。また、自社株の付与によって得られていた「自分たちも会社のオーナーである」という感覚が失われて悲しいと書いた人たちもいた。

年末商戦の前というタイミングも痛手だとの声も聞かれる。アイバーの同僚の中には、この時期の「ボーナス」を当てにしてクレジットカードの負債を全額返済したのを後悔している人もいるという。この同僚は、ボーナスなしでは月々の支払いにも支障を来すと不安を感じているそうだ。

その気持ちはアイバーもよくわかるはずだ。去年、アイバーは年末商戦のボーナスを使って屋根裏部屋に断熱材を張った。今年は温水器を新調するつもりだったが二の足を踏んでいる。今使っている温水器が壊れるまで待って、壊れたらクレジットカード払いで修理しようと思うと彼女は言った。

(執筆:Karen Weise記者、翻訳:村井裕美)
(c) 2018 New York Times News Service

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