売れない商品ほど「名前がピンと来ない」理由 言葉をうまく置き換えたネーミングがキモだ

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人がモノをイメージするのは「言葉」からです。だから私は、商品・サービスを世の中に広めるうえで「ネーミング」を重要視しています。みかんと言われればオレンジ色の果物をイメージします。グレープフルーツはやや大きめの黄色い果物です。ただ、グレープフルーツを「イエローメガみかん」だと言われたら、それはもうグレープフルーツではない新しいコンテンツとして、人はイメージしてくれます。そうです、言葉の置き換えひとつでも、商品・サービスは「コンテンツ」として認識される可能性があるのです。

言葉の置き換えだけで「コンテンツ」になる

アップルの「iPhone」は言わずと知れた爆発的ヒット商品で、スマホの代名詞と言っても過言ではないと思いますが、この商品が発表されたとき「iPod」「携帯電話」「ネット通信機器」の3商品の合体版だとプレゼンされていました。ただ、商品名を「iPhone」と言い切ったことが、その後の大ヒットにつながったのだと私は思っています。

もしこれが、「電話機能付きiPod」や「電話のできるパソコン」だったらどうでしょうか。「電話(Phone)」を主語にしたところに人を惹きつけるものがあったのではないでしょうか。「電話(Phone)」だったから、iPodユーザー以外のたくさんの人たちも、生活の一部になることをイメージできたのだと思います。このように「言葉の置き換え」はコンテンツ化を図るうえで有効なテクニックです。

唐突ですが、私はプリンが大好きです。その中でもパステルの「なめらかプリン」という商品が大好きです。極限まで柔らかくした、まさになめらかなプリンです。初めて食べたときの感動は忘れません。差し入れするときはいつもパステルで買っています。みんなとても喜んでくれます。しかし時折、思うことがあります。

『人がうごくコンテンツのつくり方』(クロスメディア・パブリッシング)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

「これは、もしかしたら、プリンではなく、カスタードクリームなのではないか……」と。もちろんあれだけおいしい大ヒット商品ですから、さまざまな技術やノウハウがあってこそ生まれたものだと思います。でも、もしこの商品が言葉の”置き換え”でできたものだとしたらスゴすぎます。真相はわかりませんが(笑)。

コンテンツ化とは「価値を感じたい」と思っている人たちに、「価値を感じてもらえるよう仕立てる」ことです。コンテンツ化は、いまどきの言葉にすると「マッチング」かもしれません。新しい商品・サービスを世に出そうとするときは、ぜひその商品・サービスそのものを「コンテンツ化する」という視点で考えてみてほしいと思っています。

高瀬 敦也 コンテンツプロデューサー

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たかせ あつや / Atsuya Takase

株式会社ジェネレートワン代表取締役CEO。1998年フジテレビ入社、営業局にてスポットセールスプランニングに従事。その後、編成制作局にて「逃走中」「戦闘中」「Numer0n(ヌメロン)」など企画性の高い番組を多数企画。「逃走中」「戦闘中」ではニンテンドー3DSのゲームもプロデュースし、シリーズ累計100万本を超えるセールスを達成。「Numer0n」ではアプリ化を前提とした企画としてゲーム内容からデザインし、スマートフォンアプリは350万ダウンロードを記録。また、DJ活動も行い、自身もソロアルバム(CD)を全国リリース。フジテレビを退社した現在、さまざまな業種の新事業企画、新商品企画、広告プロモーション戦略立案など、幅広いコンテンツプロデュース・コンサルティングを行っている。

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