KYB、免震・制振不正ダンパー1万本の巨大衝撃 非主力事業だが、業績を暗転させる可能性も

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KYBが10月19日に開いた記者会見には多くのメディアが詰めかけた(撮影:風間仁一郎)

今回は耐震偽装とは異なり、国交省は震度7程度の地震でも耐えられるとしているが、不適合品では揺れが伝わりやすくなる可能性がある。免震は地下に装置を設けて振動が建物に伝わりにくくするもので、制振は各階に装置を配置して、風や地震による建物の揺れを低減する仕組みだからだ。東日本大震災後に安全対策として免震・制振装置を備える施設が増えていた。

KYBは今後、不適合品の全量交換を進める方針だが、装置を製造・販売する子会社の生産能力は月100本程度にとどまる。新規受注は停止し、生産能力を5倍に引き上げることで2020年9月の交換完了を目指すという。

交換用の製品代金だけでも100億円以上

免震ダンパーは免震ゴムのように建物の重みを支える部分に設置されていないため、交換は比較的容易とみられる。一方、制振ダンパーは壁に埋め込まれている場合もあり、解体が必要になれば時間も費用も膨大になりそうだ。ダンパーの価格は免震用が1本130万円、制振用が1本70万円で、交換用の製品代金だけでも100億円以上かかる。

東洋ゴムは累計の特別損失が1400億円を超え、全国154棟に出荷していた不適合品の交換作業の進捗はいまだ全体の6割にとどまる。KYBは11月6日の決算発表を控え、業績影響の試算に入ったが、件数が東洋ゴムの6倍以上と大規模で、先行きが見えない。

KYBはこの免震・制振オイルダンパーで約45%の国内トップシェアを誇る。ただ、事業売上高は2017年度で25億円と連結全体の1%に満たない。競合他社との競争も激しく、利益はトントンとみられる。主力は世界2位のシェアを誇る自動車向けサスペンション(緩衝器)で、筆頭株主はトヨタ自動車だ。連結業績は好調で、2018年度は過去最高益を見込む。だが、今後は非主力への対応が全社を揺るがす事態にまで発展する可能性も出てきた。

冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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