東洋ゴム、交換費用は140億円だけで済むのか 社長が国会に招致され、釈明に終始
東洋ゴム工業の経営陣は、免震ゴムのデータ偽装の疑いを知りながら、出荷を続けていたのか――。
4月24日に発表された、大手法律事務所による調査の中間報告。その中で、2014年5月には東洋ゴムの信木明会長(当時社長)に、同年8月には山本卓司社長(当時専務)にも、免震ゴムデータ偽装の疑いが報告されていたことが発覚した。さらには、両者が出席した同年9月の会議において、免震ゴムの一部製品の出荷停止方針を決めたが、直後に撤回。翌2015年2月まで出荷を続けていたことも明らかになった。
5月8日の衆議院国土交通委員会に参考人招致された山本社長は、2014年9月の会議について、「間違った報告がなされた」「隠ぺいした会議だとは思っていない」などと釈明。が、信木会長、山本社長ともに、問題のある可能性を把握しながら、対処を見送ったという責任は重い。
法律事務所による調査の最終報告は、遅くても5月下旬にはまとまる予定だ。東洋ゴムは報告書の受領から1~2週間で、再発防止策や経営責任の所在などをまとめ、発表する方針。山本社長は自身の進退も検討する考えを示している。
ゴムを替えると1基500万円弱
免震ゴムのデータ偽装問題の全容がいまだ見えない中、5月12日、東洋ゴムは第1四半期決算を発表。製品補償引当金繰入額という項目で、140億円を特別損失として計上した。2015年12月期の最終利益見込みは、期初の280億円から、190億円に下方修正された。
特損140億円は、対処が必要な154棟で交換を想定する、免震ゴム約3000基の対策費用を見積もった数字である。内訳は、製品代金、改修工事費用、構造再計算費用、諸経費、代替品開発費用など。東洋ゴムによると「業者に見積もってもらった数字」だという。単純計算で1基あたり約467万円が対策費用として充てられたことになる。
以前から1基あたりの交換費用を500万円と推定していた、バークレイズ証券の三浦隆史アナリストは、「合理的な数字」と評する。同アナリストは独自に予想していた交換費用145億円に、訴訟、物件の竣工遅れによる営業補償などの顧客対応費用50億円を加えた、195億円を特損金額として見積もっている。
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