石から紙を作る素材革命に挑戦する男の野望 耐水性に優れた新素材「LIMEX」とは何か
――普通の紙では考えられないです。素材が気になりますが紙とは違うのですか。
これは石灰石を原料にして作っています。この石灰石というのが、地球でほぼ無尽蔵にあるといわれる資源で、安くて豊富にあるんです。資源のない日本でも100%自給できる資源といわれているのが、この石灰石なんです。
――石灰石はどういう成分でできているんですか。
サンゴとか魚の骨とかが地層化されて、たまっていきこの石灰石ができていきます。
――石でできているというのが衝撃ですが、それでこれだけ薄い物ができているっていうのが驚きです。
薄くて軽く、皆さんが普段お使いになられている紙と同じように使っていただけるように開発をしています。
――どうやったら、石で作ってこれだけ薄くできるのですか。
石灰石を主原料にして樹脂と混ぜ合わせて、それをこねてシート状に延ばしていきます。通常の紙というのは大量の木材と大量の水を必要とするのですが、LIMEXは原材料を混ぜてシートにしていくので水を使わなくて済みます。そのため、どこででも作れるというのが大きな特徴です。
――名刺を紙ではなく石で作るというのは、環境面で考えた時も重要な方向性を示していますよね。
日本は水資源が豊富ですが、グローバルでみると水資源の枯渇というのはものすごく深刻です。世界中のグローバルリスクのなかでも常に上位にランクインしていて、水資源の乏しい国で紙は自国では作れないんです。
そんな国でも自国にある石灰石を活用して紙のようなもの作っていただく。そういうことを世界中でどんどん展開していきたいと思っています。
世の中はペーパーレス化が進むのか?
――世の中は、IT化ということでペーパーレスという指摘もあると思うのですが…
日本人の間ではそう思われているのですが、2014年度で世界では、だいたい4億トンぐらいの紙を使っていたんですね。2030年にはその倍の8億トンぐらいの紙が必要といわれています。
これはどういうことかというと我々日本人は、年間1人200キロぐらい紙を使います。しかし中国では年間1人当たりの使用料がまだ100キロまでいっていません。インドではまだ10数キロとかです。
それが日本の年間使用量の半分ぐらいである100キロくらいまで伸びるとして、さらに今後の人口増加と産業化を見据えると、やはり2030年にはいまの倍ぐらいの紙が必要だといわれています。
ペーパーレスというのは、グローバルでみたときにはちょっと考え方が違うかなと我々は思っています。