金融特化メディアの「ZUU」が狙っていること 冨田和成代表取締役ロングインタビュー

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冨田:将来的には、そういった姿をめざそうというのが当社のビジョンです。上場する際に開示した「成長可能性に関する説明資料」にも掲げていますが、当社は創業以来、ディストリビューションとオペレーションを分離させることで、金融機関がより効率的に潜在的なユーザーを開拓できる環境を整えることをめざしてきました。

情報収集や商品・サービスの比較、購買判断といったディストリビューションの分野は、ZUU onlineなどの自社メディアや当社が製作を支援する顧客企業のメディアプラットフォームが担います。こうして潜在的なユーザーを効率的に開拓・送客することで、金融機関はオペレーションに専念できるわけです。

金融の本質的な機能とはオペレーションで、たとえば銀行なら決済や送金、為替、預金といった窓口業務に端を発するものです。しかし、ディストリビューションの分野もつながっているために全国各地に店舗が展開され、そこに数多くの営業担当者がぶら下がるという構図となっています。

(ZUU「成長可能性に関する説明資料」より)

村上:そして、もっぱら金融機関ではディストリビューションの分野に、冒頭で指摘されていた非効率性が散見されるということですね。

ネオバンクという業態が盛り上がりをみせている

冨田:真のディストリビューションとは、顧客の利便性を高めるためのプラスアルファの機能でしかないと私は考えています。「お客様がもっと儲けられるから、そのために営業活動を行う」とかいったスタンスのものです。銀行の本質的な機能は、圧倒的な信用力の下にあるオペレーションにあるのです。

すでに海外では、ディストリビューションとオペレーションを切り離すという事例が出始めており、ネオバンクという業態が盛り上がっています。ネオバンクは銀行代理店免許を用いて展開しているサービスで、要はブローカレッジ(金融商品の売買仲介)を担っている人たちです。このように、海外ではオペレーション機能を持たずディストリビューションに特化したサービスが出始めています。既存の金融機関の9割以上の社員はディストリビューションの分野に属していると表現しても過言ではないかもしれません。

一方で、金融機関、特に銀行が築いてきたオペレーションに対する信用は、圧倒的な価値を有しています。おそらく世の中のほとんどの人は、銀行には安心して資産の大半を預けられるでしょう。

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