金融特化メディアの「ZUU」が狙っていること 冨田和成代表取締役ロングインタビュー
当初は、飛び込み営業なんて極めて非効率で、手数料も高くてあまり意味がないのではないかと内心は懐疑的でした。ところが、経験を重ねていくうちに、「非効率の中における効率」のようなものが存在していて、それを仕組化できると面白そうだと考えるようになったのです。何軒も訪ね歩いてどんどん断られていくわけですが、その中でも開拓できたお客様はネット証券ではけっして獲得できないタイプで、非常に太い結びつきのお付き合いになります。
そういったお客様を何人か得ることができれば、その手数料収入だけで一人の営業担当者の人件費を賄えてしまうという商売が成り立っているのです。
村上:それが「非効率の中の効率」ということなのですね。
ITと金融をうまく活用し夢を実現させたい
冨田:そうです。どうして金融業界ではそういったことが成り立つのかという疑問を自分の中でモヤモヤと抱き続けてきたのですが、日本においてもインターネットでの販売に特化した保険会社が登場するなど、大きな変化も見られました。私はそういったサービスが絶対に伸びると思ったのですが、意外と苦戦しているのを見て驚きました。なかなか日本では金融とITが上手くからみ合っていかなかったのです。
村上:本来、ITを活用すればあらゆる業界が効率化されてくはずなのに、国内の金融業界では必ずしもそのようにならない側面があったということですね。
冨田:ええ。そういった現実を知る一方で私は、3年間の支店勤務を終えた後に本社の超富裕層向け部隊へ配属され、シンガポールでプライベートバンカーとして東南アジア経済の活気を目の当たりにしました。その後、1カ月間だけ東京に戻ってから、すぐにタイに派遣されて、今度は東南アジアにおけるネット証券戦略と他地域への進出戦略に関わりました。その業務に1年間携わった後、東京に戻ってから起業したというのが当社設立に至るまでの経緯です。
こうして国内のリテール(個人向け)営業から海外の超富裕層向け、さらには金融業におけるネット戦略まで、一通りのビジネスを経験させてもらったことで、私の中ではいくつかの気づきがありました。「人の人生や思い、夢といったものにはお金がとても密接に関わっている」と痛感したことがその一例です。夢を実現させたいと思った際に、お金というハードルが立ちはだかり、なかなか前に足を踏み出せない人は少なくありません。そのような問題を解決していきたいというのが当社を設立した動機の一つとなっています。
村上:ということは、他にも動機があるのでしょうか?
冨田:ええ。大きなパラダイムシフトが起こっていると直感したこともキッカケとなっていますね。私が当社を立ち上げた頃にはまだフィンテックという言葉は生まれていませんでしたが、海外の金融業界における最先端の事例を調べてみたところ、すでに何らかのムーブメントが発生していることがうかがえました。