日本の里親「世に知られていない」数々の真実 「=養子縁組」は間違い?自治体間に格差も

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:岩朝さん自身、里親のトレーニングの部分はどうでしたか?

岩朝:私自身、研修でもっと学んでおけばよかったなと思ったことが多々あったので、私が講師として立つ時には、実践的なことをリアルに伝えています。

:直面して向き合ってきた中で得た経験をシェアされているんですね。以前、里親制度を取材した時には、ある程度研修も受けるという話は聞いたのですが、まだまだ十分ではないということでしょうか?

岩朝:はい。里親向けの研修はありますが、都道府県によって内容が違います。

:どんな違いがあるのですか?

岩朝:例えば、1日みっちり研修を受けないといけない都道府県もあれば、1日4時間程のレクチャーで、「あとはテキスト読んでください」というレベルのところも。本当の差が激しいので、できれば統一して欲しいと思います。統一して「これをやらなければいけない」ということがちゃんと決まっていれば、ある程度のレベルを担保していくことができる。ある一定の知識はないと、これから不和が多くなる心配があります。

:子どもたちは、自分から生まれ育つ場所を選べないですからね。

里親のマッチングにも自治体格差が

:日本において、子どもたちと里親とのマッチングは、具体的にどう行われているのですか? これも自治体によって違うのでしょうか?

岩朝:はい。各児童相談所が、その地域に登録している里親をよく知らないと、マッチングは実際難しい。データ上のマッチングではなく、やはり「この人にはあの子が合いそうだな」というマッチングでないと。実子さんがいる・いないでも環境が変わってきますし。実際にその里親を見たことがある、話したことがあるという方じゃないと、なかなか実際のマッチングは難しいと思うので、地域の児童相談所がそれぞれマッチングをやるというのは、仕方ないと思います。

:厚生労働省が里親委託に関する数値目標を発表しましたが、目標達成のために無理なマッチングが増加しているというような心配はないでしょうか(※9)。

(※9:”愛着形成に最も重要な時期である3歳未満については概ね5年以内に、それ以外の就学前の子どもについては概ね7年以内に里親委託率75%以上を実現し、学童期以降は概ね10年以内を目途に里親委託率50%以上を実現する。”平成29年8月2日厚生労働省「新しい社会的養育ビジョン」より。)

岩朝:それが怖いなと思いますね。子どもの最善のためにマッチングしていくならいいのですが、目標値が設定されてしまって、それに対して数字を上げなければいけないというマッチングは無理が生じてくる。間違いがなければいいなという懸念はあります。

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