日本の里親「世に知られていない」数々の真実 「=養子縁組」は間違い?自治体間に格差も

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:先ほど「虐待」というキーワードを出しましたが、親御さんと暮らせない子どもたちは、そもそもどういう事情があるのでしょうか? いろんなケースがありそうですね。

岩朝:今多くなっているのは、例えば、親の精神疾患です。乳児を抱えたお母さんが重いうつ病を抱え、本人はあげないつもりはないものの、母乳をあげるのを忘れてしまう。自分のことでいっぱいいっぱいになってしまって、結果としてネグレクトという形で「育児放棄」と取られ、子どもが保護されてしまうというケースがありました。「よくなったら子どもを育てたいので」というお母さんもいるのですが、結果的に長期に渡ってお母さんが入院してしまったという子どもたちもたくさんいます。

:実際に子どもの虐待死で割合として多いのは、0歳〜3歳までの乳幼児だという調査もありますね(※7)。そういう意味で言うと、里親制度があることで親御さんの方も守ることができるということかもしれませんね。

(※7:”死亡時点における子どもの年齢について、平成26年度に把握した心中以外の虐待死事例では、「0歳」が27人(61.4%)で最も多く、3歳未満は32人(72.7%)と7割を超える状況であった。”平成28年9月厚生労働省「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について」より。)

岩朝:そうなんです。誰だって子育てを練習したことはないので、行き詰まる事はあると思います。このラジオを聞いていらっしゃる方の中にも、育児でいっぱいいっぱいだという方もいるかもしれません。その時には、一時的にでも里親を利用するということも手段の1つに知っていただけたらなと思います。

(写真:GARDEN Journalism)

:そもそも、4万5000人という数字は、実態を表していると思いますか?

岩朝:そうですね。里親がいない、施設がいっぱいでこれ以上保護できないという状況も今の日本にはあるので、この数字に含まれない、保護されていない子どもが実際にはいると思います。

実際に里親になって感じた、日本の親権の強さ

:実際に、岩朝さん自身も里親としてお子さんと暮らしていらっしゃるそうですね。

岩朝:はい。一緒に暮らしてもう7年。子どもは11歳になりました。

:いかがですか?

岩朝:里親の皆さんはよく言うのですが、1回やったらやめられない。もちろんいいことばかりではないですが、里親としてずっとその子の成長を見られるのは、すごく楽しいです。今までは、「家族はみんな血が繋がってないけど、私たちは絆で繋がってるね」という話をしていたのですが、去年子どもが「そろそろ血も繋がっているかもしれないね」と言ったんですよ。それが、里親冥利に尽きる。血の繋がりがあるかもしれないと子どもが感じるほど、確かな愛情を子どもが感じているということが、人間の芯として支えになっていく。「この子は今こう感じてくれているんだな」と思うと、本当にやってよかったなと思います。

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