日本の里親「世に知られていない」数々の真実 「=養子縁組」は間違い?自治体間に格差も
堀:児童虐待の話をする時に必ず課題点として取り上げられるのが、日本国における親権の強さです。親御さんの権利が強すぎるがために、せっかく保護し、預かった先でようやく安定してきたかなという時に、親御さんの対応によっては、また戻ってしまう、里親の方と引き離されてしまうという現状もありますよね。実際にはどうですか?
岩朝:多々あります。例えば、私が最初に委託を受けた子どもは、「家で楽しく暮らしている」という報告をお母さんが児童相談所から受け、「楽しく暮らしているのは許せない」ということですぐ迎えに来られました。懐いているというのが許せなかったということです。
堀:複雑ですね。それならば大切に育ててあげてと思うけれど、そうはできない環境もあったわけですよね。
岩朝:お母さんによっては、子どもの幸せを願うよりも先に自分の幸せを願っている方もいらっしゃいます。自分の都合や気分で子どもを振り回す。子どもの幸せを第一に考えていない親権者が子どもの足かせになり、子どもの人生を潰していくというのはありますね。
堀:岩朝さん自身は、親権の問題については、どうしていくべきだと思われていますか?
岩朝:とても難しい問題ですよね。例えば、虐待のニュースを見た時に、もっと早く親権を切ればいいのにと思いながらも、児童相談所の現状を見たり、実際に子どもたちの様子を見たりしていると、もし私が親権を決める権限を持っていると仮定した時に私は親権を切ることができるだろうかと考えたら、子どもの一生を決めることなので、勇気がいりますね。
里親研修に自治体格差、知識の底上げが必要
堀:里親の制度を充実させなくてはいけない理由は、どういう点だと考えていらっしゃいますか?
岩朝:子どもたちはいろいろな背景を持っているので、これからの里親は、もう少し養育レベル上げる必要があると思います。障害を持っているなど、養育しづらい子どもたちが増えてきているので、そういった子どもたちに対しての対応など、里親はもっとレベル上げていかなければなりません(※8)。今、善意だけで「里親をやりたい」という方が多いのですが、養育・福祉のプロである施設の職員さん達が今まで担ってきたものをこれから里親にスイッチするのであれば、やはり里親も専門的な知識をもう少し学んでいただかなければいけません。善意だけではできない範囲が増えてきています。