企業が次々参画、「浮体式」風力発電に熱視線 次世代電源として期待、実用化へ動き出した

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洋上風力は大きく二つに分類される。基礎を海底に固定する着床式と設備を浮かべる浮体式だ。水深の浅い海底が広がる欧州で導入が進むのは着床式だ。

一方、日本では浮体式の導入ポテンシャルが高いとされる。浮体式が適した水深の深い海域が多いためだ。環境省の試算によれば、浮体式の導入ポテンシャルは着床式の4倍近い。

着床式と同程度のコストを目指す

北九州市沖の実証事業はその浮体式。NEDOの伊藤正治統括調査員は「着床式だけでは(洋上風力発電を増やしていくためのポテンシャルが)足りない」と実証事業の意義を強調する。

狙いはコストの圧縮だ。着床式と浮体式の導入における一つの線引きが水深50メートル。そうした水深で着床式と同程度のコストを実現することを目標にする。

風車には2枚羽根を採用。発電機が入ったナセル部分を小さくすることで強風対策を施した。台風など日本の厳しい環境に耐える結果を示せれば「画期的なことになる」と、丸紅の幾島渉・国内電力プロジェクト部長は期待を込める。

発電事業はかかわる企業が幅広く、それは洋上風力も同じ。たとえば準大手ゼネコンの戸田建設。同社は2012年、長崎県五島市沖に2000キロワットの浮体式洋上風力発電設備を建設、現在では事業全体を取り仕切る。

今年5月には風車を設置するための専用船を完成させた。従来は大型クレーン船を使い風車を吊り上げていたが、専用船では沖まで風車を吊り上げずに運び、コストを低減する。洋上風力は、調査や設計、運用など「全部やってみないと最適解が見えてこない」(戸田建設の佐藤郁エネルギー事業部副事業部長)。そのノウハウをいち早く蓄積していることが強みだ。

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