企業が次々参画、「浮体式」風力発電に熱視線 次世代電源として期待、実用化へ動き出した

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欧州のエネルギー会社も商機をうかがう。ノルウェーのエクイノール社は9月、日本オフィスを開設した。同社は昨年英スコットランド沖で浮体式風力発電設備の運転を始めており、日本でビジネスチャンスを探る。

一方で、浮体式洋上風力の普及には課題も多い。

運転・保守体制に課題

まず送電網への接続が可能かどうかだ。台風や津波といった災害リスク、波が高い日には設備に近づけないことを織り込んだうえで運転・保守体制を確立する必要がある。実務上は、運転実績が少ない中で損害保険をかけられるかどうかも重要だ。建設には環境アセスをクリアすることが大前提であり、漁業に対する影響や景観への配慮は欠かせない。

さらに重要なのが、海域利用のルールを明確化することだ。港湾区域に関しては海域を最長20年にわたり占有できる制度が整備されているものの、大部分を占める一般海域については制度整備がなされていない。

最長30年の占有を認める法案が先の通常国会に提出されたが廃案となった。洋上風力のような大型プロジェクトでは、一定期間操業できることを担保できなければ、金融機関などから融資を受けることは難しい。

今夏に決定した政府のエネルギー基本計画は、再生可能エネルギーの主力電源化をうたう。その一方で、2030年度に想定される電源構成については、2015年にまとめた数字を踏襲しており、風力発電の想定割合はわずか1.7%。東京大学の石原孟教授は「現状でも世界平均が5~6%であることを考えると、風力発電を推進する力があまりに弱い」と指摘する。卵が先か鶏が先かの議論だが、電源育成に政府の後押しが必要なことは間違いないだろう。

欧州では風車、送電ケーブルなどで「メーカーの寡占化が進んでいる」(石原教授)。ただ、浮体式風力を商業ベースに乗せた例はほとんどなく、この分野では日本企業が世界をリードできる可能性がある。官民の本気度が問われる。

大塚 隆史 東洋経済 記者

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おおつか たかふみ / Takafumi Otsuka

広島出身。エネルギー系業界紙で九州の食と酒を堪能後、2018年1月に東洋経済新報社入社。石油企業や商社、外食業界などを担当。現在は会社四季報オンライン編集部に所属。エネルギー、「ビジネスと人権」の取材は継続して行っている。好きなお酒は田中六五、鍋島。

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