ポンペオ氏訪朝で露呈したアメリカの「弱点」 情勢は北朝鮮に優位、アメリカは方針転換

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ポンペオ国務長官は訪朝前に、北朝鮮の非核化に向けた「道筋」を見いだす、といった言葉を口にしている。訪朝後に寄った韓国では「この先には多くのステップがあるが、今日は一歩前進した」とも述べた。ポンペオ国務長官に同行したアメリカの政府関係者が、非核化は「長距離」のプロセスになるだろう、と語ったという報道もある。

どのコメントにも、時間をかけた段階的な非核化の可能性が強く打ち出されており、9月の国連総会直前までアメリカ政府がとっていたスタンスから逸脱してきている様子が見てとれる。アメリカはつい最近まで、「最終的かつ完全に検証された非核化(FFVD)」を2021年までに実現するよう北朝鮮に要求しており、これはシンガポールの米朝首脳会談で金委員長と交わした約束だとも述べていた。

非核化スタンスに変化?

しかし、9月に新たな南北首脳会談が行われ、国連総会の演説でトランプ大統領が金委員長との蜜月を強調し、非核化の期限にはこだわらないと語ったことで、ポンペオ国務長官が堅持してきた圧力路線は頓挫してしまったようだ。アメリカ政府の非核化スタンスは、ここにきて修正されつつあるように見える。

これは重要かつ望ましい変化だ。そもそも「非核化はかなり長期的で複雑なプロセスになる」との見方が専門家の間では大勢を占めてきた。米朝が互いに譲歩し合う必要もある。これまでアメリカが掲げてきた目標は非現実的で、世の中の期待をいたずらに高めるだけのものでしかなかった。対話を進展させるには、期待値も現実に対応させていく必要がある。

アメリカのスタンスの変化が、具体的な交渉戦略の変化につながるのかどうかは予断を許さない。ただ韓国の康外相は、アメリカには「柔軟な対応をとる用意があるようだ」と述べている。

国務務省は「金委員長は(今年5月に爆破作業が行われた)豊渓里(プンゲリ)の核実験場が不可逆的に解体されたことを立証するため、査察官を招待した」という声明を出した。ただ、核不拡散の専門家の中には、これは金委員長による宣伝行為だ、とする声がある。過去に行った核施設破壊行為を再利用することで、非核化を前進させることなく、非核化が進んでいるかのようなイメージを作り出そうとしているというのである。

「金委員長が査察官受け入れに応じた」という声明をどう解釈するかはさておき、北朝鮮が国際世論を都合よくコントロールする能力に長けていることだけは間違いない。そうした北朝鮮からアメリカがさらなる譲歩を引き出すには、制裁緩和なども交渉のテーブルに載せるなどして先手を打ち、主導権を奪い返す必要があるだろう。

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