ポンペオ氏訪朝で露呈したアメリカの「弱点」 情勢は北朝鮮に優位、アメリカは方針転換

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注目されているのが、トランプ大統領が11月6日の中間選挙より前に2回目の首脳会談を開催するつもりなのかどうかだ。大統領任期途中で行われる中間選挙は極めて重要だ。今後2年間の議会の勢力図が、これによって決まってしまうからである。

トランプ大統領は2回目の米朝会談を材料に支持率をてこ入れし、「やり手のディールメーカー」としてのイメージを無党派層に植え付けようともくろんでいる節がある。

より現実的な外交政策の立案に向けて

しかし、中間選挙まですでに1カ月を切っており、調整が間に合わない可能性もある。その場合、トランプ大統領は中間選挙より前に、2回目の会談実施が決まったという発表だけを前倒しで行うことも考えられる。これなら、中間選挙前に会談を行って、その結果に批判を加えられるリスクを避けつつ、期待感だけを有権者に売り込むことができる。会談で金委員長に友好的に接しすぎて、アメリカのメンツを潰したかのように見られたら、国民から反発を食らいかねない。

ポンペオ国務長官と金委員長の会談は2時間にわたり、その後、ポンペオ国務長官はサプライズ的に昼食会に招かれた。これは友好的な雰囲気を打ち出すのに役立っただけでなく、じっくりと時間をかけて個人的な関係を深め、腹を探り合う機会が得られたことを意味する。

具体的な成果を伴わない外交プロセスにおいては、相手の思惑を直接確かめられるかどうかがポイントになる。仮にポンペオ国務長官と金委員長が互いの動機や狙い、制約事項などを率直に話し合うことができたのだとすれば、より現実的な外交政策の立案が可能となる。

しかし、今回のような極めてハイレベルで特別な外交イベントは、着実な交渉のベースとはなりえない。メディアの注目度や世の中の期待感を無用に高める結果となってしまうからだ。

たとえば、「日経アジアレビュー」(日本経済新聞の英語媒体)は、「ポンペオ国務長官訪朝 非核化の溝埋まらず」という見出しの記事を掲載したが、「非核化の溝を埋める」のは極めてハードルが高く、最初から訪朝の目的とはなっていなかったはずだ。つまり、国務長官レベルで交渉を続ける以上、「非核化」の期待はずっしりとポンペオ国務長官の肩にのしかかることになる。

具体的な成果に向けて内容を詰めるには、事務方レベルで着実かつ静かに対話を進め、交渉を見世物にしないことが大切だ。アメリカ側の発表によれば、ポンペオ国務長官と金委員長は事務方に調整を進めるよう指示したとされる。重要かつ望ましいステップといえよう。

今回の訪朝で最も重要な動きは、アメリカが非核化についてのメッセージを修正してきている点だ。

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