ポンペオ氏訪朝で露呈したアメリカの「弱点」 情勢は北朝鮮に優位、アメリカは方針転換
ポンペオ国務長官は平壌へと向かう途中で東京に立ち寄り、訪朝後にソウルで韓国政府に会談の内容を報告。その後、さらに北京へと飛んだ。ポンペオ国務長官はアメリカが進める非核化外交について、主要国からの支持を確実なものにしておきたかったのだろう。
ポンペオ国務長官としては、北朝鮮に対する圧力路線を復活させる狙いもあったのかもしれない。同氏は少し前に国連安全保障理事会で圧力維持の必要性を訴えたが、中国とロシアがアメリカの圧力路線に非協力的であることを立証する以外の成果は得られなかった。
米中貿易戦争にほくそ笑む北朝鮮
一方の北朝鮮も、近隣諸国を味方につけておくことが死活的に重要なことはよくわかっている。制裁ムードの切り崩しを狙う北朝鮮は、「わが国はアメリカと真剣かつ誠実に対話しており、これに応える責任はアメリカにある」というイメージを作り出す戦略であり、そのためには中国とロシアの協力が必要だ。
金委員長は近くロシアを訪問する見込みだと伝えられ、中国の習近平国家主席も遠からず訪朝するとみられている。
地政学的な情勢は、今のところ北朝鮮に味方しているようだ。まず、中国政府とロシア政府のいずれもが、アメリカが求める対北制裁の強化には反対している。さらに貿易戦争の拡大に加え、マイク・ペンス副大統領が中国に敵対的なスピーチを行ったことで、米中の緊張が加熱。中国が北朝鮮政策を巡ってアメリカに協力しなければならない理由は、一段と減退した。
ポンペオ国務長官は現在も、南北融和をアメリカが支持するかどうかは非核化の進展次第、というスタンスをとり続けている。9月の南北首脳会談は米朝対話の再開につながったため、仲介役としての文氏の外交努力は今のところアメリカの逆鱗には触れていない。しかし、アメリカは基本的に南北関係を巡って派手に立ち回る韓国政府を白い目で見ている。
文氏にとっては、アメリカの怒りを買わずに南北融和を進展させるという綱渡りが今後も続くことになる。
結局のところ、今回の訪朝についてポンペオ国務長官自身が語った評価は的を射ている。生産的ではあったが、道のりは遠い、ということだ。今回の訪朝で2回目の米朝首脳会談に向けたすり合わせは進展した。うまくいけば、アメリカの非核化スタンスも一段と現実的なものへと修正されていくだろう。だが、これが具体的な成果につながるのかどうかは、まだ誰にもわからない。
(文:ミンタロウ・オバ)
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