非核化よりも南北関係改善に進む韓国の事情

なぜ民族愛を強烈に演出するのか

南北融和を強烈に演出した(写真:Pyeongyang Press Corps/ REUTERS)

「(今回の平壌共同)宣言は長くはないが、新しい希望にあふれた民族の息遣いがあり、強烈な統一への意志を燃やす同胞の夢が込められている」(北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長)

「北の同胞の皆様、南の同胞の皆様、海外の同胞の皆様、戦争のない朝鮮半島が始まりました。南と北は今日、朝鮮半島で戦争を起こしうるすべての脅威をなくすことにしました」(韓国の文在寅大統領)

文氏が韓国大統領としては11年ぶりに北朝鮮の首都、平壌を訪問して実現した南北首脳会談。9月19日の共同宣言署名後の記者会見では、両首脳が親交を深めた4月と5月の首脳会談に続き、「南北融和」を強烈に演出した。

文大統領は南北の関係改善を優先

今回の首脳会談において、日本やアメリカをはじめとする国際社会の最大の注目は、金委員長がどのような非核化措置を取るかだった。アメリカのドナルド・トランプ大統領は、「北朝鮮が非核化の約束を守れば、金委員長と年内に再び米朝首脳会談を行う考えがある」とのメッセージを文大統領に託したと報じられている。

しかし、今回の南北首脳会談を通じて、文大統領は、北朝鮮の非核化より南北の関係改善を優先していることがはっきりした。北の完全な非核化の前に、南北経済協力事業の開城(ケソン)工業団地や金剛山(クムガンサン)観光事業を正常化させようとしている。アメリカ頼りではなく、朝鮮民族の力で「朝鮮半島の平和と繁栄」を前進させようとしている。

安全保障の分野では、「脅威」とは「意思」と「能力」の掛け算とされる。意思と能力のどちらかがゼロであれば、脅威はゼロとなる。文大統領は「平和と繁栄へ民族の心は1つ」(18日に芳名録に記した言葉)の精神を説き、北の韓国攻撃の意思をなくそうとしている。かりに北が核戦力という「能力」を温存しても、韓国攻撃の「意思」がなければ「脅威」はなくなるからだ。

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